硬い椅子は紘から貰ったこのクッションのお陰で、全然痛くなかった。
正直最初は「大丈夫かな?」なんて思っていたから、本当に紘には感謝してる。
けれど問題はそこじゃなかったみたい。
「紬ちゃーん??」
突っ伏した状態の私は、翔の声で顔を上げた。
そこにはしゃがみ込んで同じ目線の翔と、立っている凪と紘の姿がいた。全員不思議そうに私を見ている。
「紬?具合わりぃのか?」
「何処が苦しいですか?直ぐに水を、」
…違うよ。
首を左右に振った。
苦しいわけでも、気分が悪いわけでも無い。
みんなはきっと知らない。
まさか、
「…勉強って、こんなに難しいの…?」
私が全く授業について行けないと言う事実を。
高校に入学出来たのも、みんなが私に一生懸命勉強を教えてくれたから。
勉強できない私が、高校生になってすぐ天才になれるはずもなく…。
「ど…どうしよう…もうついていけないかも…」
入学初日で躓くことになっている。
三人は対して驚く事もなく、
「あ~、確かに紬ちゃんには難易度高いのかなぁ~?」
「まあ、紬なら確かにそうかもしれませんね」
「仕方ねぇ事だな」
そ、そんな即答しなくても…!
しかし事実である。
「まあ、いいんじゃなぁい?」
「そうですね。仮に退学になったとしても、俺も一緒について行きますから」
「勿論、僕も一緒に退学なってあげる~!」
そ、そんな…!
「馬鹿か」
流石にムカッとした時だった、紘がそう言ってくれたのは。
私の頭の上に紘の大きな手が乗った。
ポンポン、と優しく撫でてくれる。
「紬がそんなんで喜ぶわけねぇだろ。
退学なんて事なったら、悲しむに決まってんだろ」
紘…。
「ありがとう。紘」
そう言って笑うと、紘は口元を緩める。
その後ろで二人は不服そうな顔をした。


