「ッ……、」
「み、みのるくん!?」
私を引っ張り退けると、翔の胸倉を掴んだ。
突然過ぎて思考が止まってしまった。
「えー?なになに?先生だいじょぶ~?」
「黙れ…紬は俺の、」
「そんな怖い顔したら紬ちゃん、怖がっちゃうよ?いいの、先生」
振り返った実くんと目が合った。
私は…思わず目を逸らしてしまった。反射的にそうしてしまった。
実くんがゆっくり手を離した。
襟元を直した翔が私の方に来る。
「僕がいるから大丈夫だよ~」
肩を抱かれ、胸に飛び込む。
「か、ける」
「ッ、狐塚…!」
翔の肩を掴む。
「先生、醜い嫉妬は可愛くないよ?」
「──────っ、」
ニマリと笑う翔の胸の中で、苦い顔をした実くんを見ていた。
なんの話をしてるんだろう…?
私じゃわからない魔法の言葉みたい。
「あ、もうこんな時間だぁ。紬ちゃん、おやすみの時間だよっ」
抱かれている状態で、ちらりと時計を見た。
21時を回ってる。
高校生になったら夜更かししたかったけど、そう言われたら寝るしかないよね。
…明日に響いたら駄目だし。
ノックする前に、ドアが開く。
入ってきたのはママ。
「紬~?もう寝る時間…あらぁ!翔くんじゃない!」
「こんばんわ、叔母さん」
「久しぶりじゃない!」と再会を楽しむママ。
何故いるのか、なんてもう全く気にしてない。これが普通だから。
「紬、今日は夜更かししちゃおっか?」
そう言ったのはママ。
「…いいの?」
「ただし10分だけねっ!」


