その夜、

目が覚めたら傑はいなくなっていた。


「つむぎぃ!」


視界が真っ暗になった。
同時に香水が鼻をツンとさせた。


「マ…ママ」

「ごめんねぇ!本当はすぐに迎えに行けばよかったのに!月一の全体会議だったなんてぇ!」


ブランドのお洋服が頬を摩る。
でも流石はお高いお洋服。

全然肌が痛くない。


「ママ…大丈夫だよ。みんながいたから」


…やっぱりママじゃなくて、傑が着替えさせてくれたって事なのかな。

ありがとうよりも、何よりも。
恥ずかしさが勝っている。


「実くん!あなたもありがとう!今日は沢山食べて行ってね!」


私の隣には実くんがいた。

教師姿ではなく、普段の眼鏡スタイル。
ダイニングテーブルの隣に座ってる。


「…お気遣いなく」

「そうだぞ!実!」


目の前のキッチンで、魚片手に叫ぶパパ。


「やっぱり実のいる学校を選んでよかった!紬を安心して学校に通わせられる!」

「いや、俺は」

「よーし!ジャンジャン出すからジャンジャン!食えよー!」