いつの間に拾ったのだろう。
落としたタイミングだろうか?
震える手を伸ばすけど、先輩には伝わってないみたいで。
「う、うお!?手も綺麗だと…!」
何故か顔が赤い先輩は、ポーチを自分の傍に置いた。
「せぱ…ゲホッ!ゴホッ、ゲホ!」
潤む瞳の先、先輩が二重になっている。
赤く染まる先輩が二人。
は、早く…しないと。
先輩の方に手を伸ばす。
…あと少し、
「ッ…、俺を…誘ってるのか?」
先輩の小さな声は私には届かなくて。
「────────ゲホッ!!」
胸が苦しくなり手を引っ込めた。ぎゅっとシャツを握り、苦しさを紛らわせる…勿論状況は何も変わらないけれど。
どうし、よう…怖い。
ぼやける視界に恐怖を感じる。
何度死ぬと思ったか分からない。
これはその感じによく似てるから。
「つ、つむぎさん」
名前を呼ばれ、無意識に顔を上げた。
息を切らし、涎が顎を伝う…そんな状態で。


