白鳥学園、いきものがかり



……翔。

車の中で手を合わせた。目を瞑り翔が帰ってくるのを今か今かと待っている。

紘は口より先に手が出るタイプ。
短気で直ぐに喧嘩腰になってしまう。

累は…知的で理不尽な事をしっかり言うタイプ……だったはずなのに。


……っ、やっぱり私も…。


そう思い顔を上げた時、コンコンと窓を叩く音がした。


「お待たせ。紬ちゃん」

「っっ…か…かけるっ…」


安堵と同時に涙が零れた。
車の鍵が開き、中へと入る。

翔は笑いながら服の袖で私の涙を拭った。


「こらこら。そんなに泣いちゃったら過呼吸なっちゃうよ~」

「うっ、うう…かける…っ」


翔はマネージャーさんに家に帰るように言うと車は走り出した。


「紬ちゃん。落ち着いたかもしれないけど、一応これ使おうね」


……私のバッグ。取りに行ってくれたんだ。

私が頷くと翔はニコッと笑って、吸入器を口へと運ぶ。
……呼吸が随分と楽になるのを感じた。


「良い子だね。紬ちゃん」


翔の声が、言葉が…私の不安な気持ちも全部落ち着かせてくれる。

瞼が重くなり、翔の方に体重が傾く。
肩に乗る私の頭を優しく撫でてくれる。

……寝たくない。

だって起きたら、いなくなっちゃう。マネージャーさんの車って事は…この後もお仕事なんでしょ?

翔の手をぎゅっと握った。


「………行かないで。翔」

「大丈夫だよ。僕は何処にも行かないよ。ちゃんと紬ちゃんの傍にいるよ」


………翔の優しい嘘なのかな。


「おやすみ。紬ちゃん」


私はそのまま眠りについた。