「紘…仕事は?えっと、忙しいでしょ?」
「あ゛?」
「もう少ししたら帰れるから。私は大丈夫だよ」
一人でも出来る。大丈夫。
ッ!?
頬を掴まれた。無理矢理向かせられた顔、頬を掴む手がズキズキと痛む。
「紬には俺が必要だろ?」
「ひ、ろ…痛い…」
「あいつ等は必要ない。俺だけいればいい。そうだろ?」
喉の奥がイガイガする。
咳が出そう。
「紬、間違えんな。紬には俺だけで十分だ。分かるな?」
なに…を言って。
我慢出来ず、咳が出た。ゲホッと同時に出たのは血。手の平に小さく残る血の痕。どうして血が出たのか分からず困惑した。
紘はナースコールを押し入ってきた看護師に、今起きたことを伝えてくれた。
…っ、ひろ。
「少し寝とけ、紬。後は俺が全部やる」
撫でてくれる頭も紘の大きな手も。
さっきまでの雰囲気とは全く違う。
優しくて大好きな紘の手だ。
私はゆっくりと目を閉じた。


