「………それより、」
チラッと私を見た後で直ぐに傑に向けられた視線。
まるで何も聞いていなかったかのように。
「スグルはそろそろ現場に行くわよ。雑誌の撮影があるって言ってあるでしょう?」
「キャンセルに…」
「これ以上は出来ないわ。発売日の関係でこれ以上の延期は無理よ。…ほら、早く行くわよ」
そう言って、卯西さんは傑の腕をとり引っ張った。
—————————それを拒絶したのは傑。
「…ッ……、!」
驚く卯西さんに目もくれず、傑は私の方を向いた。
優しく包む傑の手。とても暖かくて心地いい。
「紬、体調が悪くなったら直ぐに言ってくれ。駆け付けるから」
眉間に皺を寄せる卯西さんの姿が見える。
なんだかとても怒っているみたいだった。
「っ…大丈夫。あ…えっと…」
「さっきも言っただろ?紬の大丈夫は信用出来ない」
ど、どうしよう…?何か凄く睨まれてて…。
やっぱり起き上がってお礼するべきだった、よね?
「ほんとに…大丈夫!…凪もいるし…」
その言葉に、傑の動きが止まった。
……あれ?凪は何処だろう?
もしかしてお仕事が入ったのかも?
チュッ、
「…っ!?す、ぐる!?」
突然私の額にキスを落とした傑。
「後で迎えに来るよ。それまで待っていろ。嗚呼、ここよりも大きな病室にしてもらえるよう手配しておくから」
「え?で、でも入院するわけじゃないから…」
「俺がここにいる事はトップシークレットなんだ。ここは一人部屋だが、廊下で色んな人とすれ違うだろう?…それともバレてしまっても良いのか?」
「そ、それは駄目…」
「それなら言う事を聞いてくれるね?」
目を伏せながら、小さく頷いた。
傑は私の髪を撫でながら耳元に近付いて、
「いってくる」
囁いた。


