肩にスマホを挟めタクシーの手配をしていた。
そのまま振り返る事のないまま、傑は紬を抱えて家の中に入って行った。
凪の背後では髪を掻き上げる実の姿。
大きく舌打ちをしてから、
「紬にとって俺は…そんな信用出来無いって事か?」
と呟くと、大きな音を立て車のドアを閉め、その場を後にした。
一人になった凪は、俯きながらブツブツと何か言っている。
「……ガーゼ?…何故持ってた?…冷えてた……、……」
”自ら身を引いてくれるとは思わなかった。お疲れ様”
凪の頭の中で何度も反響する去り際の言葉。
「見てた?…最初から?…途中?…分かってて……来なかった?…俺が……自滅すると…踏んで…?…」
頭を抱え、その場に突っ伏している凪。
通勤ラッシュになりつつある時間で、通行人がチラチラと様子を伺っている。
誰も話しかける事は無い。
関わる事もしない。
『けれど、紬なら────────、』そう考える凪は自分の行動に強く後悔をしていた。
アスファルトに落ちる雫。
ポタポタと頬を伝う凪の涙。
「紬は…、永遠に、俺と…一緒ですよね…?」
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