実は傑の言葉に唖然とした。
自分の想像しているよりも遥かに辛く苦しい闘病生活だと思ったからだった。
「こんなことも知らないお前が、紬を知っている?…勘違いも甚だしいな。
お前が会っていたのは気力がある時の紬だ。紬がお前に心配をかけないよう、必死に繕っていた紬だ」
「………ッ、」
唇を噛み締める実が見ていたのは紬。さっきと同じ、苦しそうに息をしている。
「俺はずっと傍にいた。紬がどれだけ俺を拒んでも、何があってもだ。
たまに顔を見に来ていただけのお前とは違う。
紬の”大丈夫”の意味も知らないで、知ったような口を利くな」
傑は紬のバッグを持つと実から背を向けた。1度家に入るつもりなのだろう、家の鍵を出した。
ゲホッ、ゲホ…、
紬が咳き込むと、
梟木凪はハッとしたように呟く。
「…ッ、紬」
”いつもの凪”だった。
「触るな、」
傑の低い声が響く。
「誰のせいで紬がこうなったと思っている?」
「っ…、」
傑は凪の耳元に近付く。
「自ら身を引いてくれるとは思わなかった。お疲れ様」
綻ばせた顔で、そう言った。


