「………は?」
ピンポーン。
家中に響く音。
丁度来たみたい。
そうだ、実くんに凪も一緒に行けるか聞かないとだね。
「凪、早く行こ…」
スクールバッグを肩に掛ける。
────────その手首を掴まれた。
「な、ぎ?どうしたの?」
俯き気味の凪に言うけど反応はない。
「…凪?もしかして具合悪いの?」
「………、」
どうしたんだろ…、ッ!!
痛みに顔が歪んだ。
凪の掴む私の手首に力が入れられた。それもかなり強く。
「な、なぎ…痛い、」
「俺がいるのに、別の男と行くと言うのですか?」
ニコリ。
笑っている、かのように見せられた微笑み。
「言ったじゃないですか。
これからは永遠に俺と一緒に居ればいいと」
血が止まりそう。
それぐらいきつく掴まれている。
「紬、今すぐあの男に一緒には行けないと、言ってきてください」
「まっ、て。凪…ほんとに痛い…!」
「…返事は?」
…っっ!
「わ、分かった…から、離して…!」
熱を帯びた手首に空気に触れる。
目の前には笑みを浮かべる凪の姿。
「俺も一緒に断りに行きましょう。その方が紬も言いやすいと思いますし…ね?」
ズキン、ズキン。
手の痕がくっきり残ってる。
前よりも濃く、強く。
「う…ん…そう、だね」
私はこの時、初めて凪に対して恐怖を覚えた。


