雨のスキキライ

そんなことを言いながら、透真は歩き始めた。

私はまたその足を見つめてついていく。


ふと、視線を上げた。
当然だけど、透真の背中が見える。


「これは嫌いじゃないかも」


横断歩道を渡り終えるころに独り言ちると、透真が振り返った。
聞こえていたらしい。


「珍しいね。涼花さんが雨を嫌いじゃないって言うなんて」


人の迷惑になるからって並ばずに歩いていたのに、透真は私の横をキープした。


なんだか、仕返しをされているような気分だ。

なるほど、これは確かに言いたくない。


でも隠したって、私がしたみたいに、また聞かれるに決まっている。
ここは潔く言ってしまおう。


「透真の背中、結構好きだなって思って。それが見れるのは、こうやって前後になって歩ける雨の日だけでしょ? だから、悪くはないかなって」


そっと透真を見上げると、透真は顔を逸らしていた。
でも耳まで赤くしていて、顔を隠しても無駄だった。


「照れてるの?」


からかう気持ちで言ったって気付かれたのか、透真はますます私を見てくれなくなった。


いつもは私がやられてばかりで、今日初めて透真を照れさせた。
そんな透真を、可愛いと思った。

きっともっと、私が知らない一面があるだろう。
これからは、そんな君をたくさん見つけられたらって思うよ。