仲良くケーキを食べよう作戦が、見事に失敗した後。
撃沈しているシルナを横目に、俺は、令月を呼び出した。
「なぁ令月」
「何?」
「あいつ、すぐりのことだけど」
「『八千歳』のこと?」
お前ら、何だかんだお互いコードネームで呼び合ってるよな。
本名分かってるのに。
長年コードネームで呼び合ってるから、今更変えるのは難しいのかもしれない。
まぁ、あだ名で呼び合ってる仲なのだと思おう。
前向きな解釈。
「あいつ、洋菓子は好きじゃないって言ってただろ?」
「実は僕もあんまり好きじゃない」
そうなのか。
そうとも知らず、散々シルナの洋菓子に付き合わせて悪かったな。
「なら、すぐりは何が好きなんだ?食べ物の中で、何が一番好物なのか知ってるか?」
「うーん…。知らない」
…やっぱりか。
ある程度、予想はしてた。
お互い、本名さえ知らなかった仲なのだ。
お互いの好きな食べ物なんて、知る機会はなかっただろう。
「あ、でもシリアルバーならよく食べてたよ」
「…それは携帯食料だろ…」
「うん。僕もよく食べてた。任務中に」
違う。そうじゃない。
そういうことじゃないんだよ。
「じゃあ、令月の好きな食べ物は?」
「うーん…。何だろう?」
自分の好きな食べ物でさえ、把握していない。
…そもそも、魔力量の多い者は、食事をする必要がほとんどないからな。
令月も、力魔法に偏ってるとはいえ、一応魔導師の端くれだし、
まず、食事をする機会が少なかったんだろう。
「洋菓子は好きじゃないって言ってたけど…」
「うん。洋菓子よりは、和菓子の方が好き」
おっ。
なんか良い情報を得たぞ。
成程和菓子か。シルナが和菓子食べないから(あいつは生クリームやチョコレートこてこての、甘々な洋菓子しか食べない)、和菓子という発想がなかった。
「和菓子の中で何が好き?」
「…桜餅?」
「…そうなんだ…」
半年以上一緒にいて、初めて知った。
そうとも知らず、シルナに付き合わせて洋菓子ばっか食わせてごめんな。
「でも、本当に好きなのかどうか分からない。ジャマ王国にいたとき、何かの機会で一度しか食べたことないから」
「…そうか」
「そのときは、甘くて美味しいなって思った気がするんだけど…」
「…」
桜餅の一つが、何だって言うんだよ。
子供なんだから、好きな菓子くらい好きなだけ食べさせてやれ。
…とにかく。
「じゃあ、令月」
「何?」
「桜餅を作って、すぐりにあげたらどうだ?」
ケーキで親睦を深める作戦は、見事に失敗した。
その敗因を考えるに、二人共そもそも、ケーキが好きじゃなかった。
ならば、今度はお互いの好きなお菓子で再チャレンジを図ろう。
それも、手作りお菓子をプレゼントして、親睦を深める作戦。
少なくとも、シルナが一方的に買ってきたケーキ作戦よりは、効果があるのではないかと思う。
撃沈しているシルナを横目に、俺は、令月を呼び出した。
「なぁ令月」
「何?」
「あいつ、すぐりのことだけど」
「『八千歳』のこと?」
お前ら、何だかんだお互いコードネームで呼び合ってるよな。
本名分かってるのに。
長年コードネームで呼び合ってるから、今更変えるのは難しいのかもしれない。
まぁ、あだ名で呼び合ってる仲なのだと思おう。
前向きな解釈。
「あいつ、洋菓子は好きじゃないって言ってただろ?」
「実は僕もあんまり好きじゃない」
そうなのか。
そうとも知らず、散々シルナの洋菓子に付き合わせて悪かったな。
「なら、すぐりは何が好きなんだ?食べ物の中で、何が一番好物なのか知ってるか?」
「うーん…。知らない」
…やっぱりか。
ある程度、予想はしてた。
お互い、本名さえ知らなかった仲なのだ。
お互いの好きな食べ物なんて、知る機会はなかっただろう。
「あ、でもシリアルバーならよく食べてたよ」
「…それは携帯食料だろ…」
「うん。僕もよく食べてた。任務中に」
違う。そうじゃない。
そういうことじゃないんだよ。
「じゃあ、令月の好きな食べ物は?」
「うーん…。何だろう?」
自分の好きな食べ物でさえ、把握していない。
…そもそも、魔力量の多い者は、食事をする必要がほとんどないからな。
令月も、力魔法に偏ってるとはいえ、一応魔導師の端くれだし、
まず、食事をする機会が少なかったんだろう。
「洋菓子は好きじゃないって言ってたけど…」
「うん。洋菓子よりは、和菓子の方が好き」
おっ。
なんか良い情報を得たぞ。
成程和菓子か。シルナが和菓子食べないから(あいつは生クリームやチョコレートこてこての、甘々な洋菓子しか食べない)、和菓子という発想がなかった。
「和菓子の中で何が好き?」
「…桜餅?」
「…そうなんだ…」
半年以上一緒にいて、初めて知った。
そうとも知らず、シルナに付き合わせて洋菓子ばっか食わせてごめんな。
「でも、本当に好きなのかどうか分からない。ジャマ王国にいたとき、何かの機会で一度しか食べたことないから」
「…そうか」
「そのときは、甘くて美味しいなって思った気がするんだけど…」
「…」
桜餅の一つが、何だって言うんだよ。
子供なんだから、好きな菓子くらい好きなだけ食べさせてやれ。
…とにかく。
「じゃあ、令月」
「何?」
「桜餅を作って、すぐりにあげたらどうだ?」
ケーキで親睦を深める作戦は、見事に失敗した。
その敗因を考えるに、二人共そもそも、ケーキが好きじゃなかった。
ならば、今度はお互いの好きなお菓子で再チャレンジを図ろう。
それも、手作りお菓子をプレゼントして、親睦を深める作戦。
少なくとも、シルナが一方的に買ってきたケーキ作戦よりは、効果があるのではないかと思う。


