で、何のかんのありながら。
お茶を淹れ、席に着き。
ようやく、ティータイム。
令月の前には、チーズケーキ。
すぐりの前には、ショートケーキ。
俺の前には、チョコケーキ。
何故かいきなり現れたナジュの前には、イチゴタルト。
放置していたシルナの前には、自分でモンブランを用意していた。
好きにやってろ。
「よし、仲良く食べろよ」
「いただきます」
はい、どうぞ。
全く、ケーキ一つで大変だよ。
せめて食べるときくらいは仲良くして欲しいものだ。
すると。
早速、令月が動いた。
「『八千歳』」
「チーズケーキ臭いから喋らないで」
「…」
可哀想。
「…良いよ、令月。喋りたいことがあるなら喋れば」
「…『八千歳』、チーズケーキ好き?」
「嫌い。たった今嫌いになった。『八千代』が食べてるから」
可哀想。
「そっか。好きなら一口あげようと思ってたのに」
ますます可哀想。
しかし。
「え、くれるの?」
おっ。
意外にも、すぐりが食いついた。
良い兆しだ。これは良い兆しだぞ。
「うん、どうぞ」
「ありがとー」
チーズケーキの皿をすぐりに差し出す令月。
微笑ましい。
そう、俺達はこんな微笑ましい光景が見たかった。
これで少しは、仲良く、
…と、思ったが。
すぐりは、令月がフォークを入れた断面の部分だけを、薄く切り分け。
その小さな欠片だけを残して、残りの大きなチーズケーキ塊に、ブスリとフォークを突き刺し。
一口で、全部食らいついた。
「…」
「…」
「…もぐもぐ」
令月も、俺も、止める暇がなかった。
…いるよな、たまに。
一口あげる、って差し出したら、全部食う奴。
それだけなら、ただの意地汚い嫌な奴だけど。
すぐりの奴は、令月の唾液がついてるであろう部分だけを、ご丁寧に切り分けてから。
残りの全部を、食い尽くしやがった。
「はい」
そして、空っぽになった皿だけを返す。
令月の前には、小さなチーズケーキの欠片が残っただけの、空の皿だけが残った。
…もうさ。
可哀想とか、そういう次元じゃない。
憐れ。
しかし、令月は。
「…そんなにチーズケーキ好きだった?」
「…令月…」
お前、泣いて良いと思うよ。
今度、山みたいなチーズケーキ買って、奢ってやるからな。
シルナの金で。
しかも、そんな悪逆非道なことをしておいて。
「このチーズケーキ、全然美味しくないね。こんなの食べてたの?『八千代』の味覚腐ってない?」
この毒舌。
最低だよお前は。
シルナを見てみろ。
目の前で起きた、卑劣なケーキ争奪戦に。
モンブランを食べる手を止めて、わなわな震えていらっしゃる。
その隙に。
「…栗、頂きますね」
ナジュが、こっそりシルナの皿から、モンブランのてっぺんの栗を奪っていった。
お前も最低だよ。
一緒にケーキを食べて、仲良くするどころか。
見てはいけないこの世の深淵を、見せられた気分だ。
お茶を淹れ、席に着き。
ようやく、ティータイム。
令月の前には、チーズケーキ。
すぐりの前には、ショートケーキ。
俺の前には、チョコケーキ。
何故かいきなり現れたナジュの前には、イチゴタルト。
放置していたシルナの前には、自分でモンブランを用意していた。
好きにやってろ。
「よし、仲良く食べろよ」
「いただきます」
はい、どうぞ。
全く、ケーキ一つで大変だよ。
せめて食べるときくらいは仲良くして欲しいものだ。
すると。
早速、令月が動いた。
「『八千歳』」
「チーズケーキ臭いから喋らないで」
「…」
可哀想。
「…良いよ、令月。喋りたいことがあるなら喋れば」
「…『八千歳』、チーズケーキ好き?」
「嫌い。たった今嫌いになった。『八千代』が食べてるから」
可哀想。
「そっか。好きなら一口あげようと思ってたのに」
ますます可哀想。
しかし。
「え、くれるの?」
おっ。
意外にも、すぐりが食いついた。
良い兆しだ。これは良い兆しだぞ。
「うん、どうぞ」
「ありがとー」
チーズケーキの皿をすぐりに差し出す令月。
微笑ましい。
そう、俺達はこんな微笑ましい光景が見たかった。
これで少しは、仲良く、
…と、思ったが。
すぐりは、令月がフォークを入れた断面の部分だけを、薄く切り分け。
その小さな欠片だけを残して、残りの大きなチーズケーキ塊に、ブスリとフォークを突き刺し。
一口で、全部食らいついた。
「…」
「…」
「…もぐもぐ」
令月も、俺も、止める暇がなかった。
…いるよな、たまに。
一口あげる、って差し出したら、全部食う奴。
それだけなら、ただの意地汚い嫌な奴だけど。
すぐりの奴は、令月の唾液がついてるであろう部分だけを、ご丁寧に切り分けてから。
残りの全部を、食い尽くしやがった。
「はい」
そして、空っぽになった皿だけを返す。
令月の前には、小さなチーズケーキの欠片が残っただけの、空の皿だけが残った。
…もうさ。
可哀想とか、そういう次元じゃない。
憐れ。
しかし、令月は。
「…そんなにチーズケーキ好きだった?」
「…令月…」
お前、泣いて良いと思うよ。
今度、山みたいなチーズケーキ買って、奢ってやるからな。
シルナの金で。
しかも、そんな悪逆非道なことをしておいて。
「このチーズケーキ、全然美味しくないね。こんなの食べてたの?『八千代』の味覚腐ってない?」
この毒舌。
最低だよお前は。
シルナを見てみろ。
目の前で起きた、卑劣なケーキ争奪戦に。
モンブランを食べる手を止めて、わなわな震えていらっしゃる。
その隙に。
「…栗、頂きますね」
ナジュが、こっそりシルナの皿から、モンブランのてっぺんの栗を奪っていった。
お前も最低だよ。
一緒にケーキを食べて、仲良くするどころか。
見てはいけないこの世の深淵を、見せられた気分だ。


