「…っ」
不埒者共は、一瞬にして怯んだ。
俺が見せたのは、襟の裏側につけていたピンだ。
聖魔騎士団魔導部隊大隊長であることを示す、国章が入った、青い薔薇のエンブレム。
この国で、特に優秀と認められた魔導師だけが、つけることを許される特別な印。
知らない者はいないだろう。
これで分かったか?
四人で束になってかかってこようと、まるで勝てる相手ではないことが。
ついでに言うと、お前らがナンパしようとしてる女も、同じエンブレムをつけてるんだがな。
「に、偽物だ。パチもんだ…!」
「ほう?」
まぁ、いくらでも模造品は売られてるからな。
何なら、子供向けの玩具付き菓子にもついてる。
だが。
この純銀のエンブレムが、パチもんだったとしたら…随分精巧に作ったもんだな?
「良いぜ。これが本物か偽物か…試してみるか?」
「…!」
ほんの少し、殺気とも言えない、怒気を放ってやっただけで。
腰抜けのナンパ集団は、
「い、行くぞお前ら」
「あ、あぁ」
蜘蛛の子を散らしたように、さっさと逃げていった。
…本当に腰抜けだな。
返り討ちに遭う覚悟もせずに、ナンパなんかすんなよ。
「やれやれ…」
困った奴らだ、と思いながら。
ベリクリーデを振り返ると。
「…遊びに連れてって欲しかったな…」
おい。
俺はたった今、お前を窮地から救い出した訳だが?
感謝こそされど、不満を言われる筋合いはないぞ。
「あのなぁ、ベリクリーデ…」
これだから、人の悪意ってもんを知らない奴は。
いっそ、もう放っとこうかと思ったが。
ベリクリーデは、これで顔だけは美人なのだ。
今日は、俺が傍にいたから良かったようなものの。
一人のときに、あんな輩にまた絡まれたら。
…あぁ、想像したくない。
間違いなく、ホイホイついていくことだろう。
そうなってからでは遅い。
「あいつらはな、お前を誑かして、疾しいことをしようとしてたんだよ」
「…?何で?遊びに行くって言ってたよ?」
そりゃあいつらにとっては、遊びかもしれねぇが…。
「とにかく!世の中には良い奴もいるが、悪い奴も大勢いるんだからな!知らない人に、ホイホイついていくんじゃねぇ。分かったか?」
「うん。ジュリスがそう言うなら」
宜しい。
「じゃ、そろそろ帰るぞ」
これ以上ここをうろうろしてたら、またベリクリーデが行方不明になるか。
さっきみたいな輩に、狙われないとも知れない。
「うん」
素直に頷くベリクリーデを連れて、俺は聖魔騎士団隊舎への帰路を急いだ。
不埒者共は、一瞬にして怯んだ。
俺が見せたのは、襟の裏側につけていたピンだ。
聖魔騎士団魔導部隊大隊長であることを示す、国章が入った、青い薔薇のエンブレム。
この国で、特に優秀と認められた魔導師だけが、つけることを許される特別な印。
知らない者はいないだろう。
これで分かったか?
四人で束になってかかってこようと、まるで勝てる相手ではないことが。
ついでに言うと、お前らがナンパしようとしてる女も、同じエンブレムをつけてるんだがな。
「に、偽物だ。パチもんだ…!」
「ほう?」
まぁ、いくらでも模造品は売られてるからな。
何なら、子供向けの玩具付き菓子にもついてる。
だが。
この純銀のエンブレムが、パチもんだったとしたら…随分精巧に作ったもんだな?
「良いぜ。これが本物か偽物か…試してみるか?」
「…!」
ほんの少し、殺気とも言えない、怒気を放ってやっただけで。
腰抜けのナンパ集団は、
「い、行くぞお前ら」
「あ、あぁ」
蜘蛛の子を散らしたように、さっさと逃げていった。
…本当に腰抜けだな。
返り討ちに遭う覚悟もせずに、ナンパなんかすんなよ。
「やれやれ…」
困った奴らだ、と思いながら。
ベリクリーデを振り返ると。
「…遊びに連れてって欲しかったな…」
おい。
俺はたった今、お前を窮地から救い出した訳だが?
感謝こそされど、不満を言われる筋合いはないぞ。
「あのなぁ、ベリクリーデ…」
これだから、人の悪意ってもんを知らない奴は。
いっそ、もう放っとこうかと思ったが。
ベリクリーデは、これで顔だけは美人なのだ。
今日は、俺が傍にいたから良かったようなものの。
一人のときに、あんな輩にまた絡まれたら。
…あぁ、想像したくない。
間違いなく、ホイホイついていくことだろう。
そうなってからでは遅い。
「あいつらはな、お前を誑かして、疾しいことをしようとしてたんだよ」
「…?何で?遊びに行くって言ってたよ?」
そりゃあいつらにとっては、遊びかもしれねぇが…。
「とにかく!世の中には良い奴もいるが、悪い奴も大勢いるんだからな!知らない人に、ホイホイついていくんじゃねぇ。分かったか?」
「うん。ジュリスがそう言うなら」
宜しい。
「じゃ、そろそろ帰るぞ」
これ以上ここをうろうろしてたら、またベリクリーデが行方不明になるか。
さっきみたいな輩に、狙われないとも知れない。
「うん」
素直に頷くベリクリーデを連れて、俺は聖魔騎士団隊舎への帰路を急いだ。


