「ナジュ…。令月の様子は?」
「あー、目を覚ましたらしいですよ」
そうか。
「良かったぁ…。令月君無事で…」
安堵するシルナである。
ま、ジャマ王国の、『アメノミコト』の毒にやられたんだもんな。
死んでいたとしても、おかしくなかった。
「たかが毒ごときで半日寝るとは。軟弱ですよねぇ。僕だったら秒で治りますよ」
「…」
誰もがお前みたいに、不死身だと思うなよ。
「さて、それじゃあこっちの元気な方を尋問…って、あれ」
「…」
饒舌なナジュが、黙り込んだ。
…何事だ?
そのとき、俺は気がついた。
いつの間にか、客人が。
ナジュの姿を認めるなり、目を閉じていたのである。
「え、えぇ!?だ、大丈夫?死んだ?死んでないよね!?」
狼狽するシルナ。
だが、
「別に死んでないよ」
目を閉じたまま、客人が答えた。
いや、本当は客人ではないのだが。
他に何て呼んだら良いのか分からない。
「ど、どうして目を…」
「そこにいる、読心魔法の使い手に心を読まれちゃ堪らないからね」
「…!」
…どういうことだ?
「…よく知ってますね」
珍しく、真面目な眼差しのナジュ。
「当たり前でしょ。不死身の上に、読心魔法…。厄介なのは事実だけど、でも、対抗策はある」
「…」
「君が心を読めるのは、正面から相手の目を見てるときだけ。距離が離れて目が見えなかったり、サングラスやスカーフで目を隠せば…いや、目を開けていなければ、心を読まれることはない」
「えっ、そうなんだ!」
俺も驚いたけど。
シルナが、一番驚いていた。
「そういえば、あなたが他人の心を読むときは、いつも対面でしたね」
と、イレース。
確かに、思い返せばそうだった。
つまり背中を向けてれば、心は読まれなくて済むってことか。
距離を取って、目を合わせないよう気を付けるのもアリ。
と言うか、目を閉じてれば良い。
そんな簡単な、単純なナジュ対策があったとは。
もっと早く知っていたかったよ。
「そうだったんだね!よし!今度から秘蔵のお菓子を隠すときは、目を閉じて隠そう!」
「いや、学院長の秘蔵のお菓子くらい、心を読まなくても探せますから。引き出しの二番目の奥、筆記具の後ろに潜ませた小箱に…」
「えぇぇ!!何で分かるの!?」
隠し場所が子供の発想だからだよ、馬鹿。
そのくらい、俺でも知ってるわ。
それより。
「尋問するのは勝手だけど、心は読ませないよ。この状態で、俺から何を引き出せるかな」
…このガキ。
くっそ生意気な…。
「なぁんだ…。心を読めないなら、僕役に立たないですね」
「全くです。尋問のプロの名は返上して頂かなくてはいけませんね」
「イレースさんも酷いこと言うし。あぁ悲しい。じゃあ僕は役に立ちそうにないんで、精神世界に行ってリリスに慰めてもらってきます」
「おい待てコラ」
一人だけへそ曲げて、逃げようとするな。
確かにナジュの読心魔法が使えないのは痛い。
『アメノミコト』の暗殺者の口の固さは、令月のときに散々思い知った。
だからこそ、ナジュに心を読ませて「通訳」を頼もうと思っていたのだが。
当てが外れた。
とはいえ、何も聞き出さない訳にはいかない。
やることは変わらない。
俺達は、この暗殺者の少年から、情報を聞き出さなくてはならないのだ。
「あー、目を覚ましたらしいですよ」
そうか。
「良かったぁ…。令月君無事で…」
安堵するシルナである。
ま、ジャマ王国の、『アメノミコト』の毒にやられたんだもんな。
死んでいたとしても、おかしくなかった。
「たかが毒ごときで半日寝るとは。軟弱ですよねぇ。僕だったら秒で治りますよ」
「…」
誰もがお前みたいに、不死身だと思うなよ。
「さて、それじゃあこっちの元気な方を尋問…って、あれ」
「…」
饒舌なナジュが、黙り込んだ。
…何事だ?
そのとき、俺は気がついた。
いつの間にか、客人が。
ナジュの姿を認めるなり、目を閉じていたのである。
「え、えぇ!?だ、大丈夫?死んだ?死んでないよね!?」
狼狽するシルナ。
だが、
「別に死んでないよ」
目を閉じたまま、客人が答えた。
いや、本当は客人ではないのだが。
他に何て呼んだら良いのか分からない。
「ど、どうして目を…」
「そこにいる、読心魔法の使い手に心を読まれちゃ堪らないからね」
「…!」
…どういうことだ?
「…よく知ってますね」
珍しく、真面目な眼差しのナジュ。
「当たり前でしょ。不死身の上に、読心魔法…。厄介なのは事実だけど、でも、対抗策はある」
「…」
「君が心を読めるのは、正面から相手の目を見てるときだけ。距離が離れて目が見えなかったり、サングラスやスカーフで目を隠せば…いや、目を開けていなければ、心を読まれることはない」
「えっ、そうなんだ!」
俺も驚いたけど。
シルナが、一番驚いていた。
「そういえば、あなたが他人の心を読むときは、いつも対面でしたね」
と、イレース。
確かに、思い返せばそうだった。
つまり背中を向けてれば、心は読まれなくて済むってことか。
距離を取って、目を合わせないよう気を付けるのもアリ。
と言うか、目を閉じてれば良い。
そんな簡単な、単純なナジュ対策があったとは。
もっと早く知っていたかったよ。
「そうだったんだね!よし!今度から秘蔵のお菓子を隠すときは、目を閉じて隠そう!」
「いや、学院長の秘蔵のお菓子くらい、心を読まなくても探せますから。引き出しの二番目の奥、筆記具の後ろに潜ませた小箱に…」
「えぇぇ!!何で分かるの!?」
隠し場所が子供の発想だからだよ、馬鹿。
そのくらい、俺でも知ってるわ。
それより。
「尋問するのは勝手だけど、心は読ませないよ。この状態で、俺から何を引き出せるかな」
…このガキ。
くっそ生意気な…。
「なぁんだ…。心を読めないなら、僕役に立たないですね」
「全くです。尋問のプロの名は返上して頂かなくてはいけませんね」
「イレースさんも酷いこと言うし。あぁ悲しい。じゃあ僕は役に立ちそうにないんで、精神世界に行ってリリスに慰めてもらってきます」
「おい待てコラ」
一人だけへそ曲げて、逃げようとするな。
確かにナジュの読心魔法が使えないのは痛い。
『アメノミコト』の暗殺者の口の固さは、令月のときに散々思い知った。
だからこそ、ナジュに心を読ませて「通訳」を頼もうと思っていたのだが。
当てが外れた。
とはいえ、何も聞き出さない訳にはいかない。
やることは変わらない。
俺達は、この暗殺者の少年から、情報を聞き出さなくてはならないのだ。


