―――――――…園芸部の畑に行ってみると。
野菜に囲まれた木陰に、すぐりさんが座っていた。
超不機嫌そうな顔で。
もう心を読むまでもない。
「私不愉快です!」って顔に書いてある。
これが自分の生徒じゃなきゃ、スルーしてるところなんだけど。
これが自分の生徒なもんで、話しかけずにはいられない。
「こんにちは。悩める少年さん」
「…何だよ」
「少年が悩んでるので、大人の僕がお悩み相談してあげようかと思いまして」
「…へー」
何、その胡散臭そうな顔。
「相手の心を勝手に読む汚い大人に、誰が相談事なんてしたいと思う?」
ひっど。
そりゃ確かに、人の心を勝手に読むけども。
心は綺麗だぞ?二割くらいは。
「分かりましたよ。じゃあ心は読みませんから、普通に話して下さい」
「全ッ然信用出来ないねー」
「汚い大人との約束ですから、大丈夫ですって」
「…余計信用出来ないんだけど?」
はいはい。冗談はこのくらいにして。
「本当に読みませんよ。今回は」
心は、言葉よりも素直だけれど。
今ばかりは、それをしてしまうと、僕の信用が失われるからな。
「読もうが読むまいが勝手だけど、俺は何も喋ることないから」
ほう。
貝のように口を閉ざすと。
子供っぽくて愛嬌があるじゃないか。
なら、子供っぽい懐柔作戦を使わせてもらおう。
「なら、あなたの代わりに僕が喋りますね」
「は?」
「これ、僕の知人の話なんですけどね」
思い返す。「知人」の話。
「その知人、育ての家族に疎まれて、ある日家を追い出されるんですが、そこでとある女性と出会いまして。思えば、それが知人の初恋だったんですが」
「…」
「後に知ったことですが、実はその女性、『冥界の女王』と呼ばれる、不死身の魔物だったんですよ。知人は、知らずにその魔物を恋人にしてたんですよ。凄い話ですよねー」
「…」
その、胡散臭そうな顔やめてって。
「で、そんなことはまぁ、二人の愛の前にはどうでも良いことだったんで、平和に生きていきたかったんですが…それがそうも行かず、時代の戦乱に巻き込まれ、そこで僕の知人、死にかけるんですね」
思えばあれが、初めての致命傷だったなー。
あの後、幾度となく致命傷を負うことになると、あのときのぼ、いや、僕の知人は知らなかったろうなー。
「するとその恋人の魔物が、知人に取り残されて一人になりたくないって、知人と融合して。結果、知人は不死身の身体を手に入れたんです」
「…」
「しかし、困ったことに、融合して一つになってしまったせいで、知人は恋人に会えなくなってしまいました。自分の中に恋人がいるのに、自分はその恋人に触れることも、声を聞くことも出来ない。それって、どんな地獄だと思います?」
「…自分の胸に聞いてみれば?」
「あはは」
聞いたら壊れちゃうから、聞かない。
「で、恋人にも会えない、死ぬことも出来ない自分に、狂ってしまった知人は、自分を殺すことの出来る人、自分を殺す方法を求めて、放浪の旅を始めることになったんですね」
「…」
「その過程で、色んな悪いことをしました。自分を殺してくれる人に、殺してもらう為に。死ねばまた恋人に会えるから。何百年もの間、知人は悪行を繰り返しながら、死ぬ方法を探して生きている。…今も」
「…」
「それって、凄く辛い人生だと思いません?」
「…あのさー」
あ、口利いた。
「その知人って、自分のことでしょ?」
「まぁ、そうなんですけど」
「じゃあ、わざわざ知人なんて言わなくていーでしょ」
「うん、そうなんですけど。でも、他人の話ってことにでもしておかないと、辛いのが余計辛くなるんで」
「…」
無言のすぐりさん。
本当に心を読んではないので、何を考えてるのか分からない。
あー心読みたい。
でも約束したから、やめとこう。
野菜に囲まれた木陰に、すぐりさんが座っていた。
超不機嫌そうな顔で。
もう心を読むまでもない。
「私不愉快です!」って顔に書いてある。
これが自分の生徒じゃなきゃ、スルーしてるところなんだけど。
これが自分の生徒なもんで、話しかけずにはいられない。
「こんにちは。悩める少年さん」
「…何だよ」
「少年が悩んでるので、大人の僕がお悩み相談してあげようかと思いまして」
「…へー」
何、その胡散臭そうな顔。
「相手の心を勝手に読む汚い大人に、誰が相談事なんてしたいと思う?」
ひっど。
そりゃ確かに、人の心を勝手に読むけども。
心は綺麗だぞ?二割くらいは。
「分かりましたよ。じゃあ心は読みませんから、普通に話して下さい」
「全ッ然信用出来ないねー」
「汚い大人との約束ですから、大丈夫ですって」
「…余計信用出来ないんだけど?」
はいはい。冗談はこのくらいにして。
「本当に読みませんよ。今回は」
心は、言葉よりも素直だけれど。
今ばかりは、それをしてしまうと、僕の信用が失われるからな。
「読もうが読むまいが勝手だけど、俺は何も喋ることないから」
ほう。
貝のように口を閉ざすと。
子供っぽくて愛嬌があるじゃないか。
なら、子供っぽい懐柔作戦を使わせてもらおう。
「なら、あなたの代わりに僕が喋りますね」
「は?」
「これ、僕の知人の話なんですけどね」
思い返す。「知人」の話。
「その知人、育ての家族に疎まれて、ある日家を追い出されるんですが、そこでとある女性と出会いまして。思えば、それが知人の初恋だったんですが」
「…」
「後に知ったことですが、実はその女性、『冥界の女王』と呼ばれる、不死身の魔物だったんですよ。知人は、知らずにその魔物を恋人にしてたんですよ。凄い話ですよねー」
「…」
その、胡散臭そうな顔やめてって。
「で、そんなことはまぁ、二人の愛の前にはどうでも良いことだったんで、平和に生きていきたかったんですが…それがそうも行かず、時代の戦乱に巻き込まれ、そこで僕の知人、死にかけるんですね」
思えばあれが、初めての致命傷だったなー。
あの後、幾度となく致命傷を負うことになると、あのときのぼ、いや、僕の知人は知らなかったろうなー。
「するとその恋人の魔物が、知人に取り残されて一人になりたくないって、知人と融合して。結果、知人は不死身の身体を手に入れたんです」
「…」
「しかし、困ったことに、融合して一つになってしまったせいで、知人は恋人に会えなくなってしまいました。自分の中に恋人がいるのに、自分はその恋人に触れることも、声を聞くことも出来ない。それって、どんな地獄だと思います?」
「…自分の胸に聞いてみれば?」
「あはは」
聞いたら壊れちゃうから、聞かない。
「で、恋人にも会えない、死ぬことも出来ない自分に、狂ってしまった知人は、自分を殺すことの出来る人、自分を殺す方法を求めて、放浪の旅を始めることになったんですね」
「…」
「その過程で、色んな悪いことをしました。自分を殺してくれる人に、殺してもらう為に。死ねばまた恋人に会えるから。何百年もの間、知人は悪行を繰り返しながら、死ぬ方法を探して生きている。…今も」
「…」
「それって、凄く辛い人生だと思いません?」
「…あのさー」
あ、口利いた。
「その知人って、自分のことでしょ?」
「まぁ、そうなんですけど」
「じゃあ、わざわざ知人なんて言わなくていーでしょ」
「うん、そうなんですけど。でも、他人の話ってことにでもしておかないと、辛いのが余計辛くなるんで」
「…」
無言のすぐりさん。
本当に心を読んではないので、何を考えてるのか分からない。
あー心読みたい。
でも約束したから、やめとこう。


