夜の森に。
しばし、静寂が訪れた。
血の匂いがした。
「…ほう」
興味深そうに、『アメノミコト』頭領がにやりと笑った。
木立ちの中から奇襲を仕掛けてきた、『アメノミコト』の暗殺者達は。
全員、地面に顔をつけて転がっていた。
いつでも、奇襲を掛けてくる準備はしていた。
初動は、全て受けきった。
こちらは誰一人、怪我の一つもしていない。
…すぐりがまともに戦うの、初めて見たが。
あの糸。ピアノ線のようなあの固くて細い糸が、すぐりの武器なのか。
つくづく、『アメノミコト』の暗殺者には関わりたくないものだ。
「大したものよ。あれらを一撃で蹴散らすとは」
…あれら、だと。
自分の組織の人間は、あくまで駒の一つとしか思っていない者の発言だ。
「で、これらも所詮、四天王の中でも最弱…とかいう、お決まりの台詞なんでしょう?」
ナジュが、そう煽った。
「さっさと次、出してくださいよ。まだまだ秘蔵っ子を隠してるんでしょう?」
「その通りよ。…お前の出番だ、『薄暮』」
「御意」
『薄暮』、だと?
名を呼ばれるなり、鬼頭夜陰の背後から、ゆらり、と髪の長い女が表れた。
深くフードを被っていて、目は見えないが…。
「…あ、やば」
ナジュが、そう呟くなり。
俺はいきなり、思いっきり木立ちの中に突き飛ばされた。
ナジュに、だ。
「!?」
転がりながら体勢を整え、起き上がってみると。
「…!!ナジュ!」
「いっ…たぁぁ…」
ナジュの左腕。
肘から先が、スパッと切れてなくなっていた。
おまけに、切れた腕の切断面が、濃い紫色に染まり、肌をどんどん侵食していた。
毒だ。
『アメノミコト』お得意の毒魔法。
あの女が何かしたのか、『薄暮』とかいう…。
しかし。
「え、嫌…何で…」
すぐりは、先端がドリルのように尖った、黒くて長いワイヤーを背中に生やしていた。
そのワイヤーが、ナジュの腕を切り落とした。
いや、違う。
彼は、ナジュの腕を切り落とそうとしたのではない。
俺を、一撃のもとに殺そうとしたのだ。
…それを、すんでのところで心を読んで察知したナジュに、突き飛ばされ。
運良く助けられただけで。
「すぐり…!?」
すぐりが、俺を殺そうとした。
あのどす黒い、奇妙なワイヤーで…。
「あ、いや、あれ…の…じゃ…」
左腕を切断されたナジュが、残された右手で苦しそうに喉を押さえ。
その場に崩れ落ちた。
「ナジュ!」
「…っ…」
息をしてない。
不死身だから、息が出来なくても死にはしないが。
息が出来なければ、ナジュは窒息死直前の、地獄のような苦しみを延々と味わうことになる。
間違いなく、すぐりの毒のせいだ。
「ナジュさん!」
天音が、咄嗟に駆け寄った。
「すぐに解毒を…!」
「無駄なことよ。それの毒魔法は、そう簡単に解けるものではない」
天音をせせら笑うように、鬼頭が言った。
鬼頭の戯言など、どうでも良い。
何ですぐりが。まさかこの土壇場になって、『アメノミコト』に戻るつもりじゃ、
「…な、何で…何で…」
すぐりの顔は、恐怖に染まっていた。
彼は、決して『アメノミコト』に寝返ろうとしたのではない。
でも、俺を殺そうとし、俺を庇ったナジュの腕を切り落とし、毒によってナジュを黙らせたのは、他でもないすぐりだ。
だがそれは、すぐりの意思ではなかった。
「違う、俺じゃない…!俺は、こんなことしてない!」
絶叫するすぐりは、黒いワイヤーを自由自在に操り。
俺達に向かって、その矛先を向けた。
しばし、静寂が訪れた。
血の匂いがした。
「…ほう」
興味深そうに、『アメノミコト』頭領がにやりと笑った。
木立ちの中から奇襲を仕掛けてきた、『アメノミコト』の暗殺者達は。
全員、地面に顔をつけて転がっていた。
いつでも、奇襲を掛けてくる準備はしていた。
初動は、全て受けきった。
こちらは誰一人、怪我の一つもしていない。
…すぐりがまともに戦うの、初めて見たが。
あの糸。ピアノ線のようなあの固くて細い糸が、すぐりの武器なのか。
つくづく、『アメノミコト』の暗殺者には関わりたくないものだ。
「大したものよ。あれらを一撃で蹴散らすとは」
…あれら、だと。
自分の組織の人間は、あくまで駒の一つとしか思っていない者の発言だ。
「で、これらも所詮、四天王の中でも最弱…とかいう、お決まりの台詞なんでしょう?」
ナジュが、そう煽った。
「さっさと次、出してくださいよ。まだまだ秘蔵っ子を隠してるんでしょう?」
「その通りよ。…お前の出番だ、『薄暮』」
「御意」
『薄暮』、だと?
名を呼ばれるなり、鬼頭夜陰の背後から、ゆらり、と髪の長い女が表れた。
深くフードを被っていて、目は見えないが…。
「…あ、やば」
ナジュが、そう呟くなり。
俺はいきなり、思いっきり木立ちの中に突き飛ばされた。
ナジュに、だ。
「!?」
転がりながら体勢を整え、起き上がってみると。
「…!!ナジュ!」
「いっ…たぁぁ…」
ナジュの左腕。
肘から先が、スパッと切れてなくなっていた。
おまけに、切れた腕の切断面が、濃い紫色に染まり、肌をどんどん侵食していた。
毒だ。
『アメノミコト』お得意の毒魔法。
あの女が何かしたのか、『薄暮』とかいう…。
しかし。
「え、嫌…何で…」
すぐりは、先端がドリルのように尖った、黒くて長いワイヤーを背中に生やしていた。
そのワイヤーが、ナジュの腕を切り落とした。
いや、違う。
彼は、ナジュの腕を切り落とそうとしたのではない。
俺を、一撃のもとに殺そうとしたのだ。
…それを、すんでのところで心を読んで察知したナジュに、突き飛ばされ。
運良く助けられただけで。
「すぐり…!?」
すぐりが、俺を殺そうとした。
あのどす黒い、奇妙なワイヤーで…。
「あ、いや、あれ…の…じゃ…」
左腕を切断されたナジュが、残された右手で苦しそうに喉を押さえ。
その場に崩れ落ちた。
「ナジュ!」
「…っ…」
息をしてない。
不死身だから、息が出来なくても死にはしないが。
息が出来なければ、ナジュは窒息死直前の、地獄のような苦しみを延々と味わうことになる。
間違いなく、すぐりの毒のせいだ。
「ナジュさん!」
天音が、咄嗟に駆け寄った。
「すぐに解毒を…!」
「無駄なことよ。それの毒魔法は、そう簡単に解けるものではない」
天音をせせら笑うように、鬼頭が言った。
鬼頭の戯言など、どうでも良い。
何ですぐりが。まさかこの土壇場になって、『アメノミコト』に戻るつもりじゃ、
「…な、何で…何で…」
すぐりの顔は、恐怖に染まっていた。
彼は、決して『アメノミコト』に寝返ろうとしたのではない。
でも、俺を殺そうとし、俺を庇ったナジュの腕を切り落とし、毒によってナジュを黙らせたのは、他でもないすぐりだ。
だがそれは、すぐりの意思ではなかった。
「違う、俺じゃない…!俺は、こんなことしてない!」
絶叫するすぐりは、黒いワイヤーを自由自在に操り。
俺達に向かって、その矛先を向けた。

