――――――…と、いう経緯で、この二人が学院長室にやって来たことを、俺は知らない。
俺が知っているのは、シルナが10日間に及ぶ禁菓子のせいで、精神が侵されてしまったことと。
「はうぁ〜。美味しい!美味しいよこれ!この世にこんなに美味しいものがあったなんて〜」
久々に食べた板チョコの味に、シルナが涙していることである。
そして。
「全く…。ナジュさんといえ、学院長先生といえ、どうしてこう極端なのかな」
「…悪かったよ、天音」
あの後。
窓から飛び降りようとするシルナを止め、俺達はシルナを、医務室に運び込んだ。
事情をざっくり説明すると。
名医天音は、シルナに薬代わりの板チョコを渡した。
その瞬間、ぼんやりとしていたシルナの目に、生気が宿り。
こうして、バクバクと板チョコを食べていた。
涙を流しながら。
まさに、ギブミーチョコレート状態。
更に。
「学院長先生!これ、私達の畑で採れたきゅうりの一本漬けです!良かったらどうぞ」
「ありがとう!」
ツキナという女子生徒が、自家製きゅうりの一本漬けを渡すと。
シルナは、それをぽりぽり食べながら。
「美味しいですか?美味しいですか?」
「うん!チョコバナナみたいな味がして、凄く美味しいよ」
「良かった〜!それ、すぐり君と一緒に作ったきゅうりなんですよ〜」
何だ。この噛み合わない会話。
全然甘くないはずのきゅうりの一本漬けを、チョコバナナ味に感じているとは。
完全に、舌が甘味に飢えている。
そしてツキナよ。
お前は、チョコバナナみたいな味と言われて、それで満足なのか。
分からん。もう分からん奴が多過ぎる。
「ダイエットっていうのはね、いきなりガクンと減らしちゃ駄目。少しずつ減らさなきゃ」
と、ご忠告する天音。
「あるいは、休みの日を挟むとかね。この日だけは食べても良い、とか。一日これだけは食べても良い、とか。いきなりきっぱり断ち切ったら、そりゃ辛いに決まってるでしょ」
呆れたようにそう言われ、俺も反省した。
いつの間にか、何でも過激に強行するイレース脳になってた。
心を鬼にして、と思っていたけど。
鬼にし過ぎて、潰してしまったら意味がない。
「…本当に悪かったよ、天音…」
「全く…。極端な人が多いんだから。本当に飛び降りてたら、どうするつもりだったの」
ごめんって。
「良いですか、学院長」
「ふぁい?」
きゅうりを齧りながら、振り向くシルナ。
「ダイエットは計画的に。いきなり減らし過ぎるのはご法度。そんなことしても、すぐリバウンドするよ」
「…はい…」
シルナ、しょんぼり。
「何でも極端なのは良くないよ。食べ過ぎるのも、全く食べないのも駄目。適度な量を、適度にキープ。これが一番だから。分かった?」
「…」
こくり、と頷く。
…天音がいてくれて、本当助かったよ。
学院が、と言うか学院長が崩壊するところだった。
「よしよし、元気出してくださいね〜、学院長先生!」
そんな中、一人笑顔を絶やさない女子生徒、ツキナ。
そういやこの子、ナジュが床でミンチになってるのを見ても、平然と「罰掃除行こっ!」とか言ってた子だっけ。
投身自殺未遂の現場を見たくらいじゃ、全然動じないか。
天然なのか、物凄い度胸があるのか。
何となく、すぐりとつるんでる理由が分かった気がする。
…まぁ、何にせよ。
今回の教訓。
過ぎたるは及ばざるが如し、ってことだな。
俺が知っているのは、シルナが10日間に及ぶ禁菓子のせいで、精神が侵されてしまったことと。
「はうぁ〜。美味しい!美味しいよこれ!この世にこんなに美味しいものがあったなんて〜」
久々に食べた板チョコの味に、シルナが涙していることである。
そして。
「全く…。ナジュさんといえ、学院長先生といえ、どうしてこう極端なのかな」
「…悪かったよ、天音」
あの後。
窓から飛び降りようとするシルナを止め、俺達はシルナを、医務室に運び込んだ。
事情をざっくり説明すると。
名医天音は、シルナに薬代わりの板チョコを渡した。
その瞬間、ぼんやりとしていたシルナの目に、生気が宿り。
こうして、バクバクと板チョコを食べていた。
涙を流しながら。
まさに、ギブミーチョコレート状態。
更に。
「学院長先生!これ、私達の畑で採れたきゅうりの一本漬けです!良かったらどうぞ」
「ありがとう!」
ツキナという女子生徒が、自家製きゅうりの一本漬けを渡すと。
シルナは、それをぽりぽり食べながら。
「美味しいですか?美味しいですか?」
「うん!チョコバナナみたいな味がして、凄く美味しいよ」
「良かった〜!それ、すぐり君と一緒に作ったきゅうりなんですよ〜」
何だ。この噛み合わない会話。
全然甘くないはずのきゅうりの一本漬けを、チョコバナナ味に感じているとは。
完全に、舌が甘味に飢えている。
そしてツキナよ。
お前は、チョコバナナみたいな味と言われて、それで満足なのか。
分からん。もう分からん奴が多過ぎる。
「ダイエットっていうのはね、いきなりガクンと減らしちゃ駄目。少しずつ減らさなきゃ」
と、ご忠告する天音。
「あるいは、休みの日を挟むとかね。この日だけは食べても良い、とか。一日これだけは食べても良い、とか。いきなりきっぱり断ち切ったら、そりゃ辛いに決まってるでしょ」
呆れたようにそう言われ、俺も反省した。
いつの間にか、何でも過激に強行するイレース脳になってた。
心を鬼にして、と思っていたけど。
鬼にし過ぎて、潰してしまったら意味がない。
「…本当に悪かったよ、天音…」
「全く…。極端な人が多いんだから。本当に飛び降りてたら、どうするつもりだったの」
ごめんって。
「良いですか、学院長」
「ふぁい?」
きゅうりを齧りながら、振り向くシルナ。
「ダイエットは計画的に。いきなり減らし過ぎるのはご法度。そんなことしても、すぐリバウンドするよ」
「…はい…」
シルナ、しょんぼり。
「何でも極端なのは良くないよ。食べ過ぎるのも、全く食べないのも駄目。適度な量を、適度にキープ。これが一番だから。分かった?」
「…」
こくり、と頷く。
…天音がいてくれて、本当助かったよ。
学院が、と言うか学院長が崩壊するところだった。
「よしよし、元気出してくださいね〜、学院長先生!」
そんな中、一人笑顔を絶やさない女子生徒、ツキナ。
そういやこの子、ナジュが床でミンチになってるのを見ても、平然と「罰掃除行こっ!」とか言ってた子だっけ。
投身自殺未遂の現場を見たくらいじゃ、全然動じないか。
天然なのか、物凄い度胸があるのか。
何となく、すぐりとつるんでる理由が分かった気がする。
…まぁ、何にせよ。
今回の教訓。
過ぎたるは及ばざるが如し、ってことだな。


