僕は精神世界の中で、ずっとその声を聞いていた。
そして、見えるのだ。
小さな断片のような光景。
多分、何処かの学校の風景。
教室があって、そこに生徒がいて…。
何処か見覚えのある人が、教壇に立っていて…。
かと思えば、また別の部屋。
ケーキやティーカップを机に並べて、皆でそれを囲んでて…。
何かを話してる。楽しそうに。
僕はそれを…ずっと眺めてる。
遠くからその様子を、一人で眺めていたら。
やがて彼らが振り向いて、笑顔で僕を呼ぶのだ。
手招きして、「君もこっちにおいでよ」って。
そこはまるで、僕が帰るべき家のような場所で…。
つい、足を踏み出してしまいたくなるのだ。
そんな、甘い夢。
本当なのか嘘なのか分からない、僕に都合の良い夢。
あの景色は、一体何なんだろう。
何だかとても懐かしく思えて、思わず手を伸ばしてしまいそうになって…。
…しかし。
「…駄目だよ、ナジュ君」
「…リリス…」
僕が伸ばしかけたその手を、リリスが阻むように掴んだ。
「君はここにいるの。ここの方がずっと幸せで、ずっと安全なんだよ」
「…」
そう。
リリスがそう言うから、僕はずっと、あの声を無視してきた。
あの、夢みたいな景色に手を伸ばすのも躊躇っていた。
だって、そこがどんなに温かく見えても。
それが本当に温かい場所なのか、触ってみなければ分からない。
第一。
僕にはあの人達が何者なのか、僕にとってどういう関係の人達なのか、一切分からないのだから。
「あれはまやかしなの。本当にしつこい奴ら。ここまでしてナジュ君を騙して、連れて行こうとしてる」
「…」
「ねぇ、ナジュ君。あの人達、優しい顔してるでしょ?」
「…そうですね」
優しい顔をしてる。優しい声をしてる。
思わず、近寄りたいと思ってしまう。
「だから騙されるの。前もそうだった。あの人達が、あの笑顔で騙して、ナジュ君を利用して、無理させて、壊した」
「…」
「ああして幻覚を見せるのは、ナジュ君が便利だから。便利な道具を取り戻したくて、あんなことしてるの」
便利な…道具。
そうなのか?僕はあの人達にとって、ただの便利な道具なのか。
あの人達は、その便利な道具を取り戻す為に、ここまでするのか。
僕には分からない。
僕に分かるのは、リリスが僕に嘘をつくはずがないってことだけだ。
だから、リリスの言うことを信じるべきなのだ。
それなのに。
それなのに、何故だろう。
僕は堪らなく、あの場所に心を惹かれてしまうのだ。
そして、見えるのだ。
小さな断片のような光景。
多分、何処かの学校の風景。
教室があって、そこに生徒がいて…。
何処か見覚えのある人が、教壇に立っていて…。
かと思えば、また別の部屋。
ケーキやティーカップを机に並べて、皆でそれを囲んでて…。
何かを話してる。楽しそうに。
僕はそれを…ずっと眺めてる。
遠くからその様子を、一人で眺めていたら。
やがて彼らが振り向いて、笑顔で僕を呼ぶのだ。
手招きして、「君もこっちにおいでよ」って。
そこはまるで、僕が帰るべき家のような場所で…。
つい、足を踏み出してしまいたくなるのだ。
そんな、甘い夢。
本当なのか嘘なのか分からない、僕に都合の良い夢。
あの景色は、一体何なんだろう。
何だかとても懐かしく思えて、思わず手を伸ばしてしまいそうになって…。
…しかし。
「…駄目だよ、ナジュ君」
「…リリス…」
僕が伸ばしかけたその手を、リリスが阻むように掴んだ。
「君はここにいるの。ここの方がずっと幸せで、ずっと安全なんだよ」
「…」
そう。
リリスがそう言うから、僕はずっと、あの声を無視してきた。
あの、夢みたいな景色に手を伸ばすのも躊躇っていた。
だって、そこがどんなに温かく見えても。
それが本当に温かい場所なのか、触ってみなければ分からない。
第一。
僕にはあの人達が何者なのか、僕にとってどういう関係の人達なのか、一切分からないのだから。
「あれはまやかしなの。本当にしつこい奴ら。ここまでしてナジュ君を騙して、連れて行こうとしてる」
「…」
「ねぇ、ナジュ君。あの人達、優しい顔してるでしょ?」
「…そうですね」
優しい顔をしてる。優しい声をしてる。
思わず、近寄りたいと思ってしまう。
「だから騙されるの。前もそうだった。あの人達が、あの笑顔で騙して、ナジュ君を利用して、無理させて、壊した」
「…」
「ああして幻覚を見せるのは、ナジュ君が便利だから。便利な道具を取り戻したくて、あんなことしてるの」
便利な…道具。
そうなのか?僕はあの人達にとって、ただの便利な道具なのか。
あの人達は、その便利な道具を取り戻す為に、ここまでするのか。
僕には分からない。
僕に分かるのは、リリスが僕に嘘をつくはずがないってことだけだ。
だから、リリスの言うことを信じるべきなのだ。
それなのに。
それなのに、何故だろう。
僕は堪らなく、あの場所に心を惹かれてしまうのだ。


