僕は咄嗟に、懐に帯刀していた二本の小太刀に手を伸ばした。
しかし。
「…動かないでください」
「ひっ…」
窓際の席に座っていた女子生徒の首に、ピタリとクナイが当てられていた。
少しでも力を入れれば、彼女の頸動脈から血飛沫が飛ぶことだろう。
これでは、下手に動けない。
僕は小太刀を抜けなかった。
「…君は誰?」
僕は、窓から飛び込んできた暗殺者の名前を尋ねる。
「…」
しかし、相手は答えない。
僕は『終日組』の全ての暗殺者の顔と名前を知ってる訳じゃない。
僕が『アメノミコト』を出てから、もう半年以上にもなる。
もしかしたら、顔触れも変わっているのかもしれない。
だが…。
「…もしかして、君が『玉響』?」
「…喋りましたか。あの裏切り者…『八千歳』が」
…やっぱり、彼が『玉響』。
この人が。
まるで隙がない。人質を取りながらも、常に周囲を警戒しているのが分かる。
「そのまま動かないでください。喋らないでください。従わないなら…」
「…!待って!」
僕が、叫ぶ暇もなかった。
小太刀を抜いて、助けに入る暇なんてあるはずがない。
一瞬にして、人質にされた女子生徒の首から、血飛沫が飛んだ。
クラス中に、生徒達の悲鳴が響き渡った。
「…こうなりたくないでしょう?」
『玉響』は、大量の返り血を浴びながら、冷たい声で言った。
…嫌な声音だ。
僕にとって、嫌な過去を思い出させる冷たい声音…。
「…それから」
「!まっ…」
ついでとばかりに、『玉響』は素早くクナイを投擲した。
狙いは、教壇の上に立っていた、学院長の分身。
分身の首にクナイが刺さった。
勿論クナイには、毒が塗られている。
学院長の分身は、声もなく、どろどろと崩れ。
跡形もなく、消え去った。
そのことにまた、生徒達が悲鳴をあげた。
たった一分にも満たない間に、いきなり知らない人間が教室に飛び込んできて。
そして、目の前の人間が二人も死んだのだ。
動揺しない訳がない。
恐怖しない訳がない。
誰もが怯え、震えていた。
それなのに、『玉響』は容赦なかった。
「い、嫌っ!やめて!」
「暴れると殺しますよ」
「ひっ…!」
またしても、近くにいた女子生徒の襟首を掴んで立たせ。
先程と同じように、首筋にクナイを当てた。
いつでも殺せる態勢。
一部の隙もない。
「あなたもですよ、動かないでくださいね…裏切り者、黒月令月」
「…!」
…やはり、狙いは僕なのか。
当たり前だ。
『アメノミコト』は、裏切り者を決して許さない。
地の果てまで追い掛けていって、必ず首を獲る…。
「小太刀を捨てて、両手をあげてください。さもなくば…」
「…分かった。従う。従うからその子は離して」
「あなたが動くのが先です」
…だろうね。
これ以上、犠牲を出す訳にはいかない。
僕は『玉響』の要求通り、二本の小太刀を床に捨て、両手が見えるように高く上げた。
すると。
『玉響』は、懐から小刀を取り出し、こちらに放った。
僕の足元に、からん、と小刀が落ちた。
「それで自決してください」
「…!」
「期限は一分。一分以内にあなたが自決しないと、人質を一人殺します。二分過ぎれば二人、三分過ぎれば三人です」
「…」
…やはり。
「勝手に助けを呼んだり、横槍が入っても同じです。これ以上人質を死なせたくないなら、あなた一人の死で全てを終わらせてください」
「…」
…『玉響』。
君は、完璧だよ。
最初からそんな手段で、そんな最適な手口で殺しに来られたら…僕達も、為す術がなかったかもしれない。
…けれど。
「…良いよ、どうぞ」
「…?何を」
「人質、殺したいんでしょ?どうぞ。好きなだけ殺して良いよ」
「…!?」
常に冷静で、いつでも何処でも、正しい選択を選ぶことが出来る。
それが、君の強み。
だから。
…僕達は、それを利用させてもらった。
しかし。
「…動かないでください」
「ひっ…」
窓際の席に座っていた女子生徒の首に、ピタリとクナイが当てられていた。
少しでも力を入れれば、彼女の頸動脈から血飛沫が飛ぶことだろう。
これでは、下手に動けない。
僕は小太刀を抜けなかった。
「…君は誰?」
僕は、窓から飛び込んできた暗殺者の名前を尋ねる。
「…」
しかし、相手は答えない。
僕は『終日組』の全ての暗殺者の顔と名前を知ってる訳じゃない。
僕が『アメノミコト』を出てから、もう半年以上にもなる。
もしかしたら、顔触れも変わっているのかもしれない。
だが…。
「…もしかして、君が『玉響』?」
「…喋りましたか。あの裏切り者…『八千歳』が」
…やっぱり、彼が『玉響』。
この人が。
まるで隙がない。人質を取りながらも、常に周囲を警戒しているのが分かる。
「そのまま動かないでください。喋らないでください。従わないなら…」
「…!待って!」
僕が、叫ぶ暇もなかった。
小太刀を抜いて、助けに入る暇なんてあるはずがない。
一瞬にして、人質にされた女子生徒の首から、血飛沫が飛んだ。
クラス中に、生徒達の悲鳴が響き渡った。
「…こうなりたくないでしょう?」
『玉響』は、大量の返り血を浴びながら、冷たい声で言った。
…嫌な声音だ。
僕にとって、嫌な過去を思い出させる冷たい声音…。
「…それから」
「!まっ…」
ついでとばかりに、『玉響』は素早くクナイを投擲した。
狙いは、教壇の上に立っていた、学院長の分身。
分身の首にクナイが刺さった。
勿論クナイには、毒が塗られている。
学院長の分身は、声もなく、どろどろと崩れ。
跡形もなく、消え去った。
そのことにまた、生徒達が悲鳴をあげた。
たった一分にも満たない間に、いきなり知らない人間が教室に飛び込んできて。
そして、目の前の人間が二人も死んだのだ。
動揺しない訳がない。
恐怖しない訳がない。
誰もが怯え、震えていた。
それなのに、『玉響』は容赦なかった。
「い、嫌っ!やめて!」
「暴れると殺しますよ」
「ひっ…!」
またしても、近くにいた女子生徒の襟首を掴んで立たせ。
先程と同じように、首筋にクナイを当てた。
いつでも殺せる態勢。
一部の隙もない。
「あなたもですよ、動かないでくださいね…裏切り者、黒月令月」
「…!」
…やはり、狙いは僕なのか。
当たり前だ。
『アメノミコト』は、裏切り者を決して許さない。
地の果てまで追い掛けていって、必ず首を獲る…。
「小太刀を捨てて、両手をあげてください。さもなくば…」
「…分かった。従う。従うからその子は離して」
「あなたが動くのが先です」
…だろうね。
これ以上、犠牲を出す訳にはいかない。
僕は『玉響』の要求通り、二本の小太刀を床に捨て、両手が見えるように高く上げた。
すると。
『玉響』は、懐から小刀を取り出し、こちらに放った。
僕の足元に、からん、と小刀が落ちた。
「それで自決してください」
「…!」
「期限は一分。一分以内にあなたが自決しないと、人質を一人殺します。二分過ぎれば二人、三分過ぎれば三人です」
「…」
…やはり。
「勝手に助けを呼んだり、横槍が入っても同じです。これ以上人質を死なせたくないなら、あなた一人の死で全てを終わらせてください」
「…」
…『玉響』。
君は、完璧だよ。
最初からそんな手段で、そんな最適な手口で殺しに来られたら…僕達も、為す術がなかったかもしれない。
…けれど。
「…良いよ、どうぞ」
「…?何を」
「人質、殺したいんでしょ?どうぞ。好きなだけ殺して良いよ」
「…!?」
常に冷静で、いつでも何処でも、正しい選択を選ぶことが出来る。
それが、君の強み。
だから。
…僕達は、それを利用させてもらった。


