「ーー純白ちゃん大丈夫?」


大丈夫?

いや、むしろ彼のが大丈夫だろうか。

私は未だに、放心状態。

だってーー。


ガラの悪い不良集団を、1人でやっつけてしまうぐらい強い彼。

だけどーーそんなの未だに信じられない。



「ありがとう。
だけどなんでーー、大雅くん。
あんな、強いーー「強くないよ。
ただ、あいつらがムカついたから」




軽く舌打ちして
その"あいつら"を睨んだ彼の瞳にはーー



まだ、龍が宿っていた。


彼は弱くなんかない。


彼は芹山龍の正真正銘の息子で
間違いないーー。



頼りないなんて、間違っていた。


「ーー今も、足が震えてる。

なんで、俺あんなこと出来たか分からないけど。
身体がカッ、と熱くなって、怒りが頂点に達して。
気づいたら殴ってた。

俺のいつものパンチなら当たらないし、当たっても弱いだろうし、だけど何故か力が出た」




私は、目をぱちくりとした。

彼ですら抑えられない力ーー。


自分の力さえ、怒りでコントロールできないんだ。



「まだ、感じている。

手が重い。
初めて人を殴った。

どんな理由があっても人を殴るのだけは正当化したくなかった。

だけど、あの一瞬だけは。


許せなかったーーー。

どうしても、守りたかった」



君の身体が震えてるのがわかった。


地面を見つめ、拳を見つめ立ち止まって動けない彼の手をギュッと握った。











「大丈夫ーー。







大雅くん、守ってくれてありがとうっ」







君が弱々しい君がーー


私を視界に捉えてそして抱き締めた。






離さないーー。

暖かい手。



君が初めて"男の人"に見えた瞬間。

私は、その瞳に捕らわれて動けないーー。





私はーー。











その龍にーー











捕らわれてしまった。