「おはようございます、お嬢。今日はいつにも増してアホみたいな顔で、とっても可愛らしいですね」
朝、居間へと来た碧は、わたしと目を合わせると優しく微笑んだ。
“アホ”と強調して言うものだから、悪意しか感じない。
「お、おはよ……」
挨拶を返すと、彼はすぐにわたしから目を逸らして目の前に座る。
それから、一度も目を合わさず用意されていた朝食を食べた。
……今日もとっても機嫌が悪い。
わたしが、彼を怒らせたから。
碧を怒らせた原因、それは健くんとのこと。
「本当のことを教えてください」と碧に迫られて、わたしは「本当のことしか言ってない!」と返す。
そんな同じことを休日の2日間も何十回と繰り返し……本当のことをいつまでも言わないわたしに碧は怒ってしまった。
隠しごとをしているわたしがいけないというのはわかっているけど……どうしても、碧への気持ちはまだ秘密にしておきたい。
本当のことなんて言えないよ。
わたしも黙々と朝食を食べて、学校へと行く準備をした。