その傘を見て、思い出したこと。
そういえば雨の日に碧も傘を貸したと言っていたな、って。
女の子が持っている傘はきっと、碧の傘。
碧が傘を貸したのは……あの女の子だったんだ。
頬を赤く染めて、碧と話す女の子。
その姿を見て、胸がモヤモヤする。
碧とほかの女の子が話すのはいやだ。できることなら仲良くしないでほしい。
……そう思ってしまうわたしは心が狭い。
碧がだれかを好きになってしまうことを、わたしはずっと恐れている。
小学校、中学校とヤクザのことがバレていたから、わたしと碧にはだれも近づいこなかった。それはすごく悲しかったけど……わたしは心のどこかでは本当は少し嬉しいと思っていたんだ。
だれも近づいてこなければ、碧はほかの女の子と話すこともない。
わたしだけが碧をずっと独占できる。
でも、高校は……ヤクザのことがまわりにバレていないから、碧に近づく人がいるかもしれない。
碧はとにかく顔がいいから、絶対モテるだろう。
彼がだれかを好きになってしまう可能性は、充分にあるというわけだ。