お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。




碧はわたしと向き合って、1歩ずつ近づいてくる。


“約束”というのは、やっぱりあの約束のことだ。
あの約束を果たさせるために、わたしは連れてこられたんだ。



「えっ、でも、碧、そんなのいらないんじゃ……」


1歩ずつうしろへとさがって碧から離れると、彼は。


「好きな女からのキスは欲しいに決まってんだろ。約束、勝手になかったことにしてんじゃねぇよ」


まっすぐに目を合わせて、わたしとの距離を詰めてくる。



……好きな、女?
な、なにを言って……?



「フった男にキスしたくねぇかもしんねぇけど、約束は約束。おまえがいいって言ったんだから、ちゃんと約束守って」



腕をつかまれて、引き寄せられる。
1歩2歩、と足が動けば碧がすぐ目の前に。



……な、な、な、なんだ。
“フった男”って。


フラれたのはわたしで、碧はわたしをフった側、だよね?
碧は……なんの話しをしてるの?