お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。




健くんと密着して、意識せずにはいられない。
意識しすぎて、足を動かすタイミングが何度も何度もズレて……。

そのたびに、健くんはわたしを支えてくれた。


「ご、ごめん、健くん……」
「いや、俺のほうこそごめんね」


「いや、健くんが謝ることじゃ……」
「ごめん、俺、こんな状況でも嬉しいと思ってるんだよ。茉白ちゃんにこんなに意識してもらえるとは思ってなかったからさ」


隣に目を向ければ、少し顔を赤くした健くん。
なんだか嬉しそうにしている。


「……っ」


もう……そういうこと言われると余計普通にできないんだってば。


目を逸らして下を向けば。







「どうも、鷹樹さん、健二郎くん」



横から声をかけてきたのは、碧。


休憩中なのか里古さんはいなくて、1人で飲み物を片手に持っている。


健くんと目が合うと、碧は怖いくらいにこりと笑う。


健くんの名前は、健二郎じゃない。
健一郎、なのに。
……碧は、絶対わざとまちがえた。