お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



「ちゃんとやろうね。わたし、教えるし……」
「……おぅ」

そんな会話をしたあと、碧は鞄の中から何かを取り出して、それをわたしに手渡した。


「おまえ、これ持ってろ」


渡されたものは、除菌シート。
30枚入、と袋に書かれていて、中身はぜんぜん減っていないような気がする。


なんで、除菌シートをわたしに?






「あのクソ猿に触られたらすぐ拭いて」


碧はそう言うと、自分の袖でわたしの唇を拭う。


な、なんなんだ……!
碧からキスしたくせに!
拭くのなんて今さらだよ!

キスしたの……わたしは、嫌じゃないのに。


強引に拭かれるから唇はヒリヒリ。


碧の行動は、やっぱりよくわからなくて、今の行動はムカついて……。




しゃがみこんだまま、彼のシャツを引っ張って引き寄せ……──彼の唇に、自分の唇を重ねた。




触れたのは一瞬。
わたしは、べーっと舌を出してすぐに立ち上がり、自分の部屋へと走って戻った。



……乱されるのはわたしだけなんていやだ。
体育祭が終わるまで、碧はわたしだけを考えればいい。