お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



「……わかった。だから、俺にひとつ約束して」


急に、自分の小指をわたしの前に出してくる彼。


「な、なに……?」
「俺があのクソ猿に徒競走で勝ったら、茉白が俺にキスして」



あ、碧に……キス?
つまり、わたしは……健くんか、碧か、どっちかには必ずキスしなくちゃいけないってこと?



まっすぐに目を見つめてくる彼に、わたしは断ることなんてできず。


「……いいよ。わたし、碧の応援はできないけど」


彼の小指に自分の小指を絡めて、約束。




もしかしたら、最後になるかもしれない碧との約束。


……告白をしたら、なんて言われてしまうのか考えるだけでも怖いけど、もう逃げない。

告白の心の準備をしっかりしておこう。


──そう思った直後のこと。






碧が肩にかけていた鞄がずるっと落ちて。
音を立てて、床へと落ちた。


鞄のチャックが開いていたのか、中に入っていたものが散らばる。