お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



“碧”
その名前を聞いて、すぐに思い出したのは……夏休み中、彼とキスしたこと。


あんなことがあったあとでも、やっぱり碧は何事もなかったかのようにわたしに普通に接してきている。恐ろしいほど、なにも変わらない。
……どんなことを心の中で思っているのかはわからないけど。


キスのことを思い出すとドキドキして、すぐにちがうことを考えた。


……碧と、同じクラスだったら。





「──小鳥遊くん、ごめんなさいっ!」


想像しかけた時に、耳に届いた大きな声。


離れたところにいたのは碧と、おさげとメガネが特徴で碧と同じ図書委員の──里古香織さん。


後ろ姿しか見えないけど、2人の距離はものすごく近い。
碧は、里古さんの肩に手をまわしていて、里古さんは、碧の腰に手をまわしている。


そして、2人の足には二人三脚用のベルト。


……どうやら、2人も二人三脚に出場するみたいだ。
しかも、碧は里古さんとペア。
碧が好きかもしれない、里古さんと……。


2人の距離が近すぎて、見ているだけで胸がちくりと痛む。