お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



……ちゃんとついた!

心の中で、喜んだ時に──。






碧は急にわたしを引き離して、目を一瞬合わせたかと思えば……。

近づいてくる、整った顔。



頭の中で瞬時に思い出したのは、碧とキスした夢。


え、でも……あれは夢で、現実ではキスしないよね?
正夢にならないよね?



どんどん縮まる距離。

触れそうなのは……頬ではなく、唇で。


体が動かなくて、ただドキドキしながら固まっていた。


そうしたら……。

唇が重なり合う、あと少しのところでピタリと動きをとめた彼。


はっと我に返ったようにわたしの両肩を慌ててつかんで引き離す。



「……すみません。俺、タオルもらってきますね」


すぐに立ち上がれば、ビーチサンダルを手にとってプールから出て。
早足で歩いていってしまった。



……口に、キスされるかと思った。
本当に……正夢になるところだった。


キス、するのはいやってわけじゃなかったけど……。
なかったけど!


思い出すだけでも、恥ずかしい。


……なんで、碧はわたしにキスしようとしたの?
知りたいよ……。なんでわたしにキスしようとしたのか、ちゃんと知りたいよ。


聞いたら教えてくれるのかな……。


いろんなことを考えていれば、体温が上昇して。
わたしはパシャパシャと水で顔を濡らした。