お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



「少しだけ休みたい」


こくんと頷けば、わたしの手をとってゆっくり歩き出す彼。


階段を上って駅のホームを離れ、できるだけ人の少ないほうへ向かうと、わたしを椅子へと座らせてくれた。


「俺、コンビニか自販機見つけて飲み物買ってきますね。すぐ戻ってくるのでお嬢はここにいてください」


それだけ言うと、碧はすぐに走っていく。


足の速さ風の如し。
昔から碧はかけっこで1番だったっけ。


彼の後ろ姿をぼんやりと見送った後に、思ったことがひとつ。

こんなに広い駅で迷子にならないだろうか、と。


わたしは迷う自信しかない。
ここははじめて来た駅だから。


碧はどうなんだろう。
来たことあるのかな……。


もし、碧もはじめて来た駅だったら、迷子になる可能性が高いのでは?
碧となかなか合流できなかったら入学式に遅刻してしまうかもしれない。


入学式から遅刻してくるなんて、絶対やばいやつだと思われるよね!?
絶対、初日から遅刻したくない!


わたしはすぐに立ち上がって、彼を追う。