「大丈夫ですよ。今ほどきますんでお嬢は動かないでください」
碧はそう言うとボタンに絡まった髪をほどいていく。
髪に触れる優しい手。
距離が近くて、ずっと顔を見ていられない。
朝から心臓のドキドキが加速して、この音が碧に聞こえてしまうんじゃないかと不安になる。
聞こえませんように、とひたすら祈るばかり。
「お嬢の髪はいつでもサラサラですね」
ボタンと絡まった髪はすぐにほどけて。
ぽんっとわたしの頭の上に大きな手が乗せられた。
「それと俺、思ったんですけど……。お嬢、なんかまたチビになりました?」
次に耳に届いた声。
これは絶対、バカにしてる。
チビ、なんて。しかも“また”ってつけたよ、“また”って。
「碧が大きくなっただけじゃん」
ムカついて頬を膨らませる。
そうすると、膨らませた頬に手が移動してムニっと触れた。
「餅みたいなほっぺですね」
それが、碧がわたしの頬に触った感想。
失礼な。
餅みたいって、それってつまり頬にお肉がたくさんついててお餅みたいに柔らかいってことだよね?



