お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



「おはようございます」


碧は瞬時にわたしから手を離し、頭を下げる。
わたしも「おはようございます」と挨拶をすれば、碧はすぐに顔を上げてお父さんを見た。


「組長、お嬢も一緒に行くなんて聞いてません」
「そりゃあ、おまえには言ってないからな」


ははっと笑うお父さん。


「そういうことはちゃんと言ってください」
「言ったらおまえはどうした?とめただろ?今だってとめようとしているな、碧」


「…………」
「おまえはヤクザの顔を茉白に見せたくないから連れていきたくないだけだろ。なんでそんなに茉白にヤクザの顔を見せたがらないんだ?」


「……最近はそれなりに裏の顔も見せてますよ」
「ぜんぶは見せてないだろ。おまえはまだ隠そうとしてるな」


お父さんのその質問に、黙り込む碧。

わたしも、それはすごく気になる。
なんでずっと彼は、ヤクザである小鳥遊碧の顔をわたしに隠していたのか。


わたしもただ碧を見つめていれば、彼は数秒後に口を開く。






「お嬢は、こんな俺を“大切な人”と言ってくれて、ぜんぶ知りたいと思ってくれました。俺もできる限りはお嬢の望みを叶えてあげたいと思いましたが……やっぱり、どうしても不安なんです。
お嬢の心が汚れないか、って」