お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。







目立ちたくないから、家から学校までは電車と歩き。
電車は乗り継ぎなしで1本で行けて、通学時間は1時間半。


自分で選んだ学校だけど、結構辛い。
1番辛いのは、この満員電車……!


人がこれでもかというほど乗っていて、とにかく狭い、暑い、苦しい。
それから、隣のおじさんが喫煙者なのか、すっごくタバコくさい。


きっと電車に乗る前にタバコでも吸ったんだろうな……。


家にも喫煙者はいるし、タバコの匂いには慣れているつもりだけど、この匂いが好きというわけではないからくさいものはくさい。


たまに息をとめたりして電車に揺られていたら、急にぐいっと腕をつかまれて。
強く引っ張られた。


わたしは電車のドアに背中をつけるかたちに誘導され、顔の横には大きな手がトンっとつく。


「お嬢はここにいてください」


至近距離で聞こえる碧の声。
わたしをここに移動させたのは彼だ。


今はタバコの匂いではなく、ほんのり甘い香りがする。
碧のいい匂い。

……気を使ってくれたのかな。