何度声をかけても彼は振り向いてくれることはなく。
強く手をひかれて校舎を出て、車へと向かったのだった。
「……なにもありませんでしたか」
強引に車に押し込まれたあと、やっと碧が口を開く。
……碧は、健くんのことを気にしているんだろうか。
健くんが暴走族の総長だから。
「特になにも……」
言いかけて、途中で言葉を切る。
途中で切ったのは、先輩に呼び出されるなんてことがあったから。
「なにされたんですか!?」
言葉を途中で切ったせいで碧は心配したみたいで。
ガシッとわたしの両肩をつかむと迫り来る。
「あ、えと……」
「内容によってはあのクソ猿を今すぐ──」
「ち、ちがう!健くんのことじゃなくて!」
「ほかになにがあったんですか!?」
さっきのことは……言うべきなのだろうか。
別にケガとかしてないし、言ったら碧を心配させてしまうだけかもしれないけど……。
「あ、あのね──」
言わなければ健くんの身が危ない。
わたしは碧に、先輩に呼び出され危険な目に遭い、健くんに助けてもらったことをちゃんと話した。



