お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



***


ちらりと前に座る碧を見れば、目が合って。
彼は優しく微笑んだかと思えば。


「お嬢、人参大好きでしたよね。俺の全部あげます」


碧は自分の器から人参をスプーンですくって、それをわたしの器へと入れた。
それも1つじゃなくて、3つも。


今日の夕飯は、野菜たっぷりのポトフ。
わたしの器にあった人参は、1つだけだったのに……合計で4つになってしまった。


昔から、人参は好きになれない食べ物。
カレーに入っている人参は食べやすいけど、それ以外はどうしても苦手で。

ずっと一緒にいる碧も、それはもちろん知っていることだろうに……なんて嫌がらせをしてくれたんだっ!


「碧、行儀が悪い!」


翔琉さんに怒られる碧。


「お嬢が俺の人参をほしそうに見てたから、つい」


彼は全く反省せず、それだけ言うと黙々とご飯を食べた。


別にそういう目で見てたわけじゃないのに……!
ただ、ボールでぶつけた鼻は大丈夫なのかなって思っただけで……。


「お嬢、人参は俺がもらいますよ。でも1つは自分で食べてください」


自分の器を出してくれる、優しい翔琉さん。
でも、わたしは。


「だ、大丈夫、自分で食べるから」


そう返して、頑張って人参を食べた。