「大丈夫?保健室行ける?」
先生は幸い見ていなかったみたいで怪しむことなく、優しく声をかけてくれる。
「はいっ、大丈夫です、保健室行ってきます!」
わたしはそれだけ返して、すぐに早足で歩いた。
走り出して行きたい気持ちを必死でおさえる。
具合が悪いってことになっいるから、走っちゃだめだ……走っちゃだめ。
だけど、体育館から出て、みんなから見えなくなったらすぐに走り出した。
体育館シューズから上履きに履き替えずに。
碧……。
大丈夫かな……。
頭の中は碧のことでいっぱい。
たたたっ、と全速力で走ればすぐに見えた2人。
碧と、メガネをかけたおさげの女の子。
「た、小鳥遊くん、ティッシュならまだありますからね」
「すみません、里古(りこ)さん」
耳に届いた2人の会話。
声をかけようとしたが……わたしは、それを聞いて声が出なくなった。
足をとめて、そっと近くのトイレに入って隠れる。
“里古さん”
碧は、確かにそう言った。



