別れの時。



私はいつものように、彼に殴られた。


それは、口の中を切るくらいの力で。


血の味が、する。



飲み込まないと、その血が口から溢れ出してしまう。



素直に彼に従ってさえいれば、
私はこれからも彼に殺される事なんてないだろう。


ただ、私に暴言と暴力をふるい続けるだけで。



そんなの、もう嫌。



もう別れたい。





「―――私達、別れよう」



そう私の口から出た瞬間、
彼の顔からサーと血の気が引くのが分かった。



「私達、別れよう」



もう一度、その言葉を繰り返す。


とどめを刺すように。




「―――だったら、殺してやる。

別れるくらいなら、お前を殺してやる」


彼は、私の部屋の台所のシンク下から、
包丁を手に取った。


そして、それを私に向けた。