私が顔を上げた時にはもう彼はいなくなっていて……自然に涙が出てくる――私、哉斗くんのこと異性として好きだったのかもしれない。

 気づいた時にはもう遅い。もう会うこともないし、伝えることもない。私が婚約破棄をすれば、きっと哉斗くんは幸せになれる。そう信じるしかなかった。

 私はその日以来、外に出たいと思えなくなり部屋からも出なくなった。