午後15時、勉強がひと段落した頃。

 家庭教師の天野先生が私の肩をトントンと触れた。


『美央さん、今日クッキー焼いてきたの。一緒に食べよう』


 天野先生は手話を使いそう言うと、可愛い缶箱をカバンから取り出してテーブルに置いた。


『美味しそう! 天野先生のお菓子大好き』

『良かった。じゃあ、お茶淹れるわね』


 天野先生は、手話が出来る人だ。福祉系の大学に行っていて手話サークルに所属していたらしい。

 在学中、塾講師をしていた時に手話スピーチ大会に出場したらしく。それを見ていたお父様にスカウトされたのだ。


『今日は、ダージリンにしたのよ。専門店で買ってきたの』

『もしかして、あの茶葉専門店のダージリンですか?』

『そう! いつも買うの大変なんだけど、朝から並んだんですよ』