書斎のドアをノックすると「はい、どうぞ」と父の声がして、書斎の部屋に入る。


「失礼します、ただいま帰りました」

「あぁ、おかえり。そこに座りなさい」


 そう言われて茶色の革ソファに座れば、父も向かい側にあるソファに座った。


「哉斗に決めてもらいたいことがある」

「決めてもらいたいこと、ですか?」

「そうだ。ここにある写真は、お前の婚約者候補のお嬢さんたちだ」


 婚約者候補!? まさか、海斗と話をした日に婚約者を決めろって言われるとは思わなかったから唖然とする。


「そんなに驚くことじゃないだろ? まぁ、将来の相手だ。ゆっくり決めるといい」

「はい……わかりました」


 俺は父から手渡された写真数枚を受け取り、写真とその裏に書いてあるその身元というかどこのお嬢さんかという情報を一枚ずつ見始める。

 どれも素敵な令嬢って感じで『撮られてる』感があった。だけど最後の写真に目を奪われた。撮られているという感じではなく、自然な感じで隠し撮りみたいな感じがあった。


「父さん、この子はどういう子?」


 写真の中の彼女は、いわゆる美少女そのものだ。毛先はふわふわと長い髪に色白で華奢、顔も小さくて目はぱっちりしており唇はさくらんぼ色。
 どこからどうみても、可愛い天使って感じだった。


「あぁ、その子は五十嵐グループのご令嬢だ。深窓の令嬢と呼ばれている子でね、社長もいい人だ。だが……」

「……何か問題があるんですか?」