『渡すのを忘れないうちに……開けてみて』


 耳を真っ赤にさせて少しだけそっぽを向いた哉斗くんは紙袋を私に渡した。私は紙袋の中から小さい箱を取り出してラッピングを解くとそこにはシンプルなピンクゴールドの指輪が入っていた。


『まだ、こんな指輪しか買えないんだけど』


 そう哉斗くんは言ったけど、私はとても嬉しかった。
 私のために買って来てくれたことが嬉しくてたまらなかったから。


『ありがとう、哉斗くん』

『……本物になるまで付けていて』


 そう言った哉斗くんはそう言って手の甲にキスを落とした。


『哉斗くん。これからも、会いに来てくれる?』

『もちろん。これからも、毎日美央に必ず会いにくるよ』


 哉斗くんは手話で言うと、額を私の額にくっつけて抱きしめられた。だから私は哉斗くんの背中に一文字ずつ【だ】【い】【す】【き】と描いて彼を抱きしめ返した。

 すると哉斗くんは私の首筋にそっとキスをして、こう言った。


『俺も、美央が大好きだよ』



                                    fin.