『美央、……大丈夫か?』


 そう俺が問いかけると、美央は涙目になっていて小さく『うん』と頷き返し手話で大丈夫だと言った。


『ごめんな、もう大丈夫だから』

『ありがとう、哉斗くん』


 美央はゆっくりと指文字で名前を言った。俺はもう彼女に何も言葉を紡いで欲しくなくて美央をお姫様抱っこをした。葛木と取り巻きらしいやつらから離れ、俺は美央に聞こえないように呟く。


「俺は、お前らを許さない。美央のこと傷つけたこと後悔させてやる。よく覚えておけ、葛木梨々香、篠崎礼奈、桐野あずさ」

「……っ……なんで、哉斗くんはそんなやつを婚約者にしたわけ!? 同情だけならかわいそうだよ!」

「同情? 俺が同情するとでも? 俺が美央を選んだ、ただそれだけだ。あんたに名前で呼ぶことを許した覚えはねーから」


 俺が低い声のままいえば、ビクッと体を震わせた彼女らは恐怖からか固まった。知ったことじゃないと思い、俺は美央を連れて外に出た。