『もう、行こう。大丈夫だよ』
数時間前に喧嘩して、仲直りもしていないのに……こんな、大丈夫だろうか。
『行こう。夕食の時間に遅れちゃうよ』
私が渋々頷けば、沙知ちゃんが手を握ると浴場から出てエレベーターに乗り込んだ。行く道でどう謝ろうか、どう話しかけようか考えながらエレベーターを降りるとレストラン前には哉斗くんと海斗くんが話しているのが見える。
『美央、行こう。あそこにいる』
『うん。頑張る……』
そう手話で沙知ちゃんに言うと、遠い場所にいた哉斗くんがこちらに向かって歩いてくるのが見える。
『こっち来るよ……?』
沙知ちゃんが言った瞬間、彼は私の目の前にやって来る。驚きが隠せなくて固まっていると、腕を掴み引き寄せた。
か、哉斗くん……!?
彼は私をぎゅっと抱きしめると、額にキスを落とした。