『美央ちゃんと哉斗。修学旅行に来てまで夫婦喧嘩はやめなよ』

『夫婦喧嘩じゃ、ない! 私は真剣なの!』


 そう訴えるけど海斗くんも聞いてくれない。

 修学旅行に来てまでこんな風に言い争いしたくなかった……だけど、何故かこの感情は収まらない。


『哉斗くんの分からずや! 私だって、恥ずかしい気持ちくらいあるの! 聞こえないからって馬鹿にしないで!』

『……っ、バカにしてなんか』


 ……分かってる、彼がバカにしてないこと。

 ちゃんと理解してくれているし、私のためにいろいろしてくれてるのも。


『もう、知らない……私、先に帰る』

『何言ってるんだ! 美央が一人でなんて無理だ。第一、聞こえないのにどうするんだ』


 売り言葉に、買い言葉。

 なんで、修学旅行でこんなふうになっちゃうんだろう……でも、私の心に刺さってしまった。

 沙知ちゃんと服を見ていた時は楽しかったのにな。そう考えながら私は、彼らから離れて来た道を戻った。