『これ、交換してよ』
哉斗くんは、紋章バッチを取ると私に手渡した。
『学校に婚約者がいる生徒は交換して、大切な人がいますよっていう意思表示なんだよ』
『大切にするね』
哉斗くんのと私のなんか違う……? 私のは、シルバーで作られた紋章だけだが彼のは何か石がはめられている。なんだか可愛い。
その後、誰もいない空き教室に入ると夕方まで二人で過ごした。
『美央ちゃん、今から花火あるんだよ。一緒に見ない?』
『花火? 見たい!』
花火ってよくテレビで中継してるやつだよね。生で見られるなんて嬉しい。
『ここからでも見れるけど、屋上に行ったほうがよく見えるんだよ。もうすぐしたら見に行こう』
哉斗くんはそう手話で言うと私をぎゅっと抱きしめると彼の膝に私を座らせ、後ろから抱きしめられる形になる。
『可愛い』
そう言うと、哉斗くんは私の頬にキスを落とす。
哉斗くんが触れた場所から熱さが帯びてきて、顔が熱い。ドキドキと高鳴る音が感じられて彼に聞こえちゃわないか心配だった。