幼少期の記憶なんてまったくないし、今の母親が血縁者だって信じて疑いもしなかった。


 幼稚園に入る前の写真や、思い出話が無いのは気になってたけど。

 まさか、本当の母親が他にいるなんて……


 両親は、このまま黙ってる事はできないから、いつか真実を話そうと努力はしてたみたい。

 幸い、今の母と父の間に子供ができなくて、大切に私を育ててくれたのには感謝してる。



 でも、血の繋がった本当のお母さんがいるなんて……

 しかも、一歳年下の弟がこの世に存在してると聞いて、私は……



 今まで一人っ子だと思って寂しい思いをしてたのに……


 胸がぎゅっと締め付けられて、私の目から涙があふれ出てくる。

 嬉しさと悲しさと寂しさが入り交じって、心の制御ができないよ。

 手の甲で何度ぬぐい取っても、涙が止まらない。

 目尻から頬を伝って床にポトポト落ちる私の涙を、両親は見つめてるだけ。



 家族とたくさんの思い出が詰まった大好きな家の中で、私は泣き続ける。



 父と本当の母親、私と弟の姿がある写真を手に持ったまま……