* 机の上に下ろした鞄を枕代わりにして上半身を倒し、窓際にある、まだ空いている綺春くんの席をぼんやりと見つめる。 綺春くん。 声には出さず、心の中でその名前を紡ぐ。 綺春くんがはじめてわたしだけにくれたトクベツ。何度でも呼びたくなる、愛おしい名前。 「好きだなぁ……」 「……飽きないね、ホント」 ───ぽつり、零れ落ちた声に反応が返ってきた。 やわらかい、大好きな声。バッと勢いよく顔を上げると、そこには綺春くんが立っていて、視線が交わったと思ったら不自然に逸らされた。