「…き、綺春くんもわたしのこと呼び捨てしていいよ……」
「木嶋さんは他の人にも呼ばせてるから呼び捨てしたってトクベツにはならないし」
「……そうだけど、」
「てかあんだけ毎日好き好き言ってくるくせに木嶋さんにとっておれはトクベツじゃないとがありえないでしょ」
「そっ……」
わたしの好きな人はいつだってずるくて、わたしの好意をわたし以上に分かってくれていて。時々意地悪してくるけど、笑うと雰囲気が柔らかくなる───そんな人。
「……サクシだ」
「策士ね。うろ覚えの日本語言うのやめな、イントネーション間違ってる」
「っいいじゃんそのくらい!二色くんいじわる!」
「綺春」
「え」
「綺春、でしょ?」
二色くんがわたしに向けてくれる表情も仕草も感情も、全部全部たまらなく大好きなの。
「き……綺春くん」
「ふ。うん」
綺春くんが笑う。
わたしが大好きな、優しい笑顔だった。