優しい声が、静かな教室に響いた。 瞼を上げて、からだを起こしゆっくりと振り返る。 そこにいた、会いたくてたまらなかった人の姿をとらえ、どうしてか涙さえ出そうだった。 「き、はるくん」 鞄がなかったから、もう帰ったものだと思っていた。 家に帰ったらダメ元で電話をして、出てくれなかったらインターフォンを推しに行こうと、ゴミを捨てながら決めたばかりだった。 だから、綺春くんが今ここにいることでわたしが脳内で描いていた予定は全部パーになった。脳が働かない。 綺春くんが、確かにここにいる。