―side 綺春―
「綺春くんコントローラー取って」
「うん」
「綺春くん?」
「うん」
「おーい? 聞いてる?」
「うん」
「聞いてないじゃん! もー、しっかりしてよ綺春くんってば」
はあぁ…と呆れてため息を吐いた咲に、ぱしっと優しく肩をはたかれる。
「…あ、ごめん」と反射的に出た謝罪に、我ながら情けなくなった。
「どうせ恋那のことでしょ」
「……ちが、」
「違くないね。綺春くんはわかりやすいもん」
前のめりになっておれの前からゲームのコントローラーを取った咲が、ゲーム画面を見ながら言う。
……わかりやすい、か?
自分じゃ時々鏡をみて表情筋死んでるなって思うくらいだから、顔に出やすいことはない気がするんだけど。